「日本沈没」
<視聴率も高かった人気TVドラマ>
3か月ごとのTVドラマだが、どれもそれなりにおもしろい。といって毎晩では自分の時間がなくなってしまう。いかに絞るかが重要になるのだが、昨年も取捨選択していくつかのドラマを楽しんだ。もちろん、リアルタイムで観るのは難しく、だいたいが録画して当日夜遅くか日曜等に観たものだ。
昨年の中ではTBS「日本沈没」が最もよかった。理由は2つあって、「日本が沈没する」という設定、最終的には「外国への移民政策」となる過程は、架空とはいえかなり現実的(外国政府との交渉など)に描かれており、たいそうおもしろかった。このドラマに関し、ネット上では賛否両論あり、手厳しい批判もあったようだが、まぁ、私は一視聴者としてドラマを楽しむことができた。原作の小松左京の小説は、昔大変な話題作であったが、読んだ記憶が全くなく、原作と今回の作品との相違は私にはわからない。
<官僚が主人公のドラマ>
もう1つは、主人公(小栗旬)が官僚という点だ。霞が関のキャリア官僚が主人公なんてドラマ、今まであったっけ?(・・・実はありましたね。城山三郎原作「官僚たちの夏」が13年前にTVドラマ化(やはりTBS)されて、毎週観たものです。⇒旧ブログ「昔かんりょう今いりょう」の2009年9月13日参照)元キャリア官僚の私としては、興味がないはずはなく、ドラマ進行を楽しんだ。「日本未来推進会議」(未来のための政策を各省の若手官僚が議論する諮問会議)のメンバーは、小栗旬の実年齢30歳代後半~40歳代前半―課長補佐でも上位(ちなみに私は33歳、下位の課長補佐で辞職した)―に設定されていた。確かに霞が関で「実働的」なのは、このへんの年齢、クラスの官僚だろう。あの、「究極の愚策」アベノマスクも、彼らと同年代の内閣府官僚が安倍首相(当時)に提案、いや唆(そそのか)したものらしい。
<元農水官僚の「グチ」―その1>
ただ、元農林水産省のキャリア事務官だった私としては「まぁ、しかたないかな」と思うことが2つあった。
小栗旬演ずる主人公だが、設定は愛媛県宇和島市出身。私の故郷、大洲市に近い(両市とも、同じ愛媛県南部地方―「南予(なんよ)」という)。よって方言は概ね等しい。だから、母(風吹ジュン)の方言に「ちょっと違うよな」とネイティヴスピーカーである私は感じることがあった。まぁ、それはいいとして、彼が官僚を目指した理由として、漁師の父(吉田鋼太郎)が亡くなったのは国の政策が悪いせいだと感じたためであるように描かれていたが、水産業政策が原因なのだから農水省官僚を目指すのがスジでないのかなぁと。
環境省のキャリア官僚―「環境官僚」って今や霞が関でエリートなのかなぁ。何しろほかの伝統ある省庁からみると、後発の「環境庁」として昭和40年代に設置された役所である。私が国家公務員試験を受験した昭和50年代、東大生で環境庁を第1志望にする学生などいなかった。今回、もう一人の重要な官僚役の松山ケンイチは経済産業省だが、その前身・通商産業省(あの「官僚たちの夏」の舞台)の官僚が、私ら官庁訪問学生に放った言葉が当時の環境庁の「地位」を見事に表している。
「日本経済をクルマに例えるなら、通産省がアクセル、大蔵省(現財務省)がブレーキ、環境庁なんてドアの取っ手くらいなものだよ。」
<元農水官僚の「グチ」―その2>
もう1つの「グチ」だが、「日本未来推進会議」の中の農水省の女性官僚。同会議メンバーで目立つのは、主役・準主役の環境省(小栗)・経産省(松山)は別として、厚生労働省(ウエンツ瑛士)、外務省(中村アン)くらいで、あとの各省官僚は、財務省も国土交通省も文部科学省も、毎回一言、二言のセリフ程度の出演だった。外務官僚が美人女優で農水官僚はそれほどない容姿の女優というのは、役所のイメージを反映させたものだろう。元農水官僚として言わせてもらうと、農水省にも東大法学部卒の美人官僚がいたと記憶している。