・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(26)
全く不愉快な話だ。アメリカのメディアは、今回の安倍首相の真珠湾訪問は、今年5月のオバマ大統領の広島訪問に対する「返礼」だとして報道しているらしい。
冗談ではない。1941年12月に旧日本軍がハワイの米軍基地や艦隊を戦闘機などで「奇襲」して米軍は2000人強が死亡した。一方、1945年8月の広島・長崎の原爆犠牲者は数十万人にも上る。まず、亡くなった人間の数が百倍、二桁も違う。真珠湾の犠牲者は殆どが戦闘員つまり軍人であるのに対し、広島・長崎は殆どが無辜の一般市民-非戦闘員だ。更に原爆という人類最悪の兵器で、被曝後も何十年もその後遺症に悩む人たちが沢山いる。この二つのことを同列に論じるアメリカのメディアの愚劣さには開いた口が塞がらない。
しかも、我々日本人が認識しておかなければならないのは、アメリカでは非道とされる「真珠湾攻撃」は、「策士」アメリカの術中にはまった日本軍の愚行だったことだ。太平洋戦争で日本が敗れたのは、もちろん圧倒的な国力の差であることは明らかだが、情報戦で大敗したことも主因である。つまり、当時、アメリカは、国内に強く残る対日不戦論への対応に悩んでいた。そこで、真珠湾が奇襲されることを(当時としては高度な情報技術で)事前にキャッチしていたにもかかわらず、わざと知らんぷりし、日本の「奇襲」を意図的に許し、アメリカ国民に「日本は卑怯だ」という感情を蔓延させることに見事成功したのである。それこそ、気の毒なのは、アメリカ世論を変えることに利用された、真珠湾の米軍の「犠牲者」たちだ。
もう一つ、忘れてはならないのは、日本政府のお粗末さだ。日本政府は、ちゃんと宣戦布告をアメリカに対ししていた。日本からアメリカの日本大使館に宣戦布告を連絡-打電していた。これを速やかにアメリカ政府に伝え、その後に真珠湾攻撃となる予定だった。ところが、その連絡の日、アメリカ大使館の館員たちは、送別会だか何かで出払っており、アメリカ政府への通告が大幅に遅れてしまったという。つまり、日本は、宣戦布告もしないで真珠湾を「奇襲」したというストーリーが見事に完成した訳である。当時、日米間は緊張状態であったはずだ。そんなときに、大使館館員が出払っていたって本当かしらと思わざるを得ない。華やかな外交官たちというのは、当時もパーティーに明け暮れる脳天気な人ばかりだったのかなぁ・・・。それとも、ウラでアメリカが館員たちが出払うように何か策を講じたのだろうか?