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記事一覧

にっくきコヴィッドナインティーン(COVID19)-EPIDEMIC JAPAN

2020.03.26

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(32)
〈終息どころか収束のメドも・・・・・〉
2020年=令和2年は東京オリンピックもあるし、よい年、楽しい年になるのでは、という年初の期待は見事に打ち砕かれた。にっくき新型コロナウイルス-COVID19(coronavirus disease nineteen)-によって。
 同じ「しゅうそく」だが、現状だと「終息」ははるか遠く、「収束」のメドも立たないのではないか。ワクチン、治療薬がいつかはできるとしても、現在のインフルエンザのような検査や治療が、しかも保険適用されて町医者レベルでできるような状態になるには1年、2年かかりそうな気がする。なお、既存の治療薬で効果のあるものがいくつかあるとされており、とりあえず、それらに期待するしかないようだ。
〈そもそもは発生源の武漢当局の隠蔽〉
あぁ、武漢政府が、地元の眼科医・李先生の情報を昨年12月の段階で真摯に受け止めていてくれていたら、こんな事態にはなっていなかっただろうに、と武漢当局に対し憤懣やる方ない(今さら英雄視したって遅いわい!)。米国のトランプ大統領に「コロナウイルス」でなく「中国ウイルス(Chinese Virus)」or「武漢ウイルス」呼ばわりされて中国政府が怒っているが、仕方ないだろう。
〈日本も水際対策で失敗したし・・・・・〉
我が国政府も、水際対策で失敗したといえよう。例のクルーズ船における水際対策は、世界からかなり批判された。ただ、麻生さんの言うように、船籍の英国が全く登場していないことに強い違和感を抱かざるを得ない。
ただ、発生源である中国の人たちを速やかに入国制限しておけばこんなに日本で感染拡大はなかっただろう。4月の習近平来日の予定で、中国に「気兼ね」して強い制限をしていなかったため、北海道の雪まつりに万単位の中国人が来たことと、北海道の感染者数がその人口に比して非常に多いことと無関係には思えない。しかし、若き道知事のリーダーシップで東京より感染拡大が抑えられている印象だ。
〈誰のせいでもありゃしない、みんな〇〇が悪いのか♪〉
とはいえ、WHOのテドロス事務局長が中国に大忖度して「パンデミック(世界的流行)」表明―緊急事態宣言が遅れたし、イタリアの感染爆発だって中国の「一帯一路」政策で夥しい中国人がイタリアを往来したためであることは明白だし、上記に述べた「嘆き節」を総括すると、♪誰のせいでもありゃしない、みんな〇〇が悪いのか~♪(尾藤イサオ「悲しき願い」―アニマルズ版が有名)と歌いたくなる。
ついでに、歌いたくなるといえば、郷ひろみの「2億4千万の瞳」。
♪億千万、億千万♪→♪うつるぞ、うつるぞ♪
♪エキゾチック・ジャパン♪→♪エピデミック・ジャパン♪
              ♪パンデミック・ジャパン♪
う~ん、「パンデミック」は世界的な大流行だから「パンデミック・ジャパン」というのはやはりムリがあるか・・・

二重苦の開業医

2020.03.25

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(31)
私たち医療界の末端にいる町医者は、新型コロナウイルスによる二重苦に苛まれている。まず、日常の診療においてウイルス感染の患者さんに接しているかもしれないという恐怖がある。無症状でも感染力がある可能性があり、ましてや医者にかかるのは体調不良者が多いから感染者の可能性が上がる。「37.5度以上4日間」云々で保健所に電話しても、多くは近所等の医者にかかるよう指示されるらしい。「接触者外来」のある病院が手一杯という事情があるからしかたないのだろう。
次に、診療所経営上の厳しさだ。私たち個人医院は、大きな公立病院と違って風評被害に晒されやすい。現に、つい最近のことだが、近所の保育園の保育士さんの感染が公表されたら、私の診療所にかかったことがないにもかかわらず、当院にかかったというデマがあっという間に流れ、当院の患者数は激減している。隣町のM医院の先生らがクラスター感染となり休診となっているが、医師や職員が感染者でなくとも感染した患者さんが一度でも受診していると聞くと多くの患者さんはそこの医院を避けようとするのだ。
行政は私たちを助けてはくれない。軽度の体調不良ながら責任感から往診等をしていたM医院の医師を知事は「誠に遺憾」と非難した。既に、発熱者の受診を拒否している町医者もいるという。今後同様の対応をする個人医院が増える可能性がある。まさに「地域医療崩壊」だ。
行政が、発熱者等当該ウイルス感染疑い専門の外来を臨時的に設置できないのか。感染リスク、経営リスクに晒されている私たち末端の医療者を行政は助けてくれないのか。
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以上の文章を朝日新聞「声」の投稿したところ、採用の運びとなり、字数オーバーなど修正されて、3月24日に掲載された。

新型コロナウイルスで中国の体制は変わるのか

2020.02.09

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(30)
〈新型ウイルスの衝撃〉
大変な事態になってきた。2002~2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザの流行のときでも、これほど、マスク不足、アルコール消毒液不足で困ったことがあっただろうか。
感染源は、中国武漢市の「海鮮市場で売られていた野生動物」らしい。特にコウモリが疑われている。世界保健機関(WHO)の専門家は、コウモリが発生源となった可能性が高いとしている。そういえば、SARSとMERS(中東呼吸器症候群)のときも、コウモリが発生源と考えられ、どちらも人間が感染する前にハクビシンなどで広まったと考えられていたらしい。
1980年代、昔エイズ(HIV)が世界中を震撼させた際に、同性愛の性行為から発生した、同性愛という「不自然な行為」が神の摂理に反したためではないかという意見があったが、今回も(家畜動物でなく)野生動物を食べるという「不自然な行為」が神の怒りを買ってこのようなウイルスを発生させて人類を懲らしめているようにも思える。
〈武漢市当局-中国政府の重罪〉
そもそもは、発生源の中国武漢で初期対応が悪かったことが感染拡大の主因と言っても過言ではないだろう。せっかく真摯な医師(つい最近当該感染で死亡)が昨年末に新型コロナウイルスの感染拡大について警鐘を鳴らしていたのに、「デマ」と決めつけて処分してしまうという当局の体質が問題なのだ。今になって、中国政府は彼への哀悼、評価を示しているが、「何を今さら」と腹立たしい。中国国民も政府への批判を高めているが、当然だろう。今回のことを契機に、現在の「物言う者は潰される」という体制にメスを入れてもらいたい。国民に圧政を強いる秦王朝を倒す源流となった、紀元前209年の陳勝・呉広の乱とまでもいかないまでも・・・。
〈「超大国」となった中国〉
13億人という、日本の10倍以上の人口とレアメタルなど豊かな地下資源を武器に、経済力・軍事力ともに米国に次ぐ「超大国」になった中華人民共和国。共産党という一党独裁で、経済は貧富の差の大きい資本主義社会である。しかし、ノーベル賞受賞者は乏しく、中国の基本的人権確立に尽力した(要するに体制批判した)劉暁波の平和賞が目立つくらいだ。周囲のウイグル、チベットなど他民族を弾圧、支配し、そして巧妙に懐柔している。もともと内陸国家だったはずが、南シナ海ばかりか、尖閣諸島にまで領有権を主張し、拡大膨張する海洋国家とも言い表せるほどだ。ほかにも、海底資源のある北極海に勢力を伸ばしているし、人口や地下資源で経済的可能性の高いアフリカ諸国も掌中に入れようとしている。
〈WHOの忖度〉
その「公害」が露呈したのが、WHO(世界保健機関)のトップであるテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長の緊急事態宣言の遅れだ。エチオピア人の彼は、中国にまさに「忖度」して、徹頭徹尾中国を露骨に擁護している。中国のご機嫌を取って自国の国益を損なわないことのほうが世界の人々の健康より重要ということなのだろう。開いた口が塞がらない。
〈隣国と付き合うことの難しさ〉
中国と日本の関係は、韓国と日本のそれもだが、難しいものだ。何しろお隣さんで歴史的にも付き合いが長い。そもそも、われわれ一般人でも隣人とはトラブル(境界、騒音など)が起きやすいものだ。むしろ、遠く離れた人とのほうが―日本とヨーロッパの国々との関係のように―有効関係が保ちやすいものだ。2012年に中国で起きたクレイジーな破壊行為満載の反日運動が思い出される。しかしながら、ここ何年か上海や北京を旅行して思うのは、(韓国人もそうだが)中国人そのものの人柄は、日本人とあまり変わらない、別にフツーなんだなぁということ。いつも痛感するのは「どこの国の人もいい人と悪い人の比率は変わらない」・・・日本人でも変な奴もいるしなぁ・・・。とはいえ、中国も韓国も、あまりにも日本を悪者にする教育は勘弁してほしいものだ。(現在、ベストセラー「反日種族主義」を読んでいるところ)
〈予防は免疫力維持向上しかないか〉
 さて、日本での感染拡大は依然とどまる気配がない。治療薬やワクチンの開発実用化は当分先の話だろう。マスク、手洗い等の自衛策は、TV等で随分喧伝してくれている。そのせいか、今年のインフルエンザの患者が例年よりかなり減少している。新型コロナウイルスもインフルエンザも予防策は同じだろう。手洗い等は、ウイルスが体内に入らないようにするためだが、仮に入ったとしても、抵抗力―免疫力が強ければ、当該ウイルスを退治できる。風邪もインフルエンザも殆ど罹ったことがないという人がいるが、こういう人はとても免疫力が強い身体を有している。高齢者や糖尿病等の持病がある人が新型コロナウイルス感染で肺炎を起こし重症化しやすいと報道されている。要は、免疫力の強さが勝負となる(一般的に糖尿病患者は免疫力が弱く感染症に罹りやすい傾向があるのは確かだ)。したがって、ありきたりな方法だが、免疫力を維持向上させるため、以下のことに留意しなければならない。
❶栄養バランスのとれた食事
糖質・脂質・蛋白質・ミネラル・ビタミンなどの栄養を偏らずバランスよく摂ること。
ちなみに、私は、納豆、ヨーグルト、亜麻仁油、オリーブ油は毎日摂取し、トマト、玉ねぎ、キャベツ、キノコ類、海藻類、生姜、ニンニク、果物など「健康によさそうな」食材を努めて摂るようにしている。
❷適度な運動の習慣
 過度な運動は身体を傷つける可能性があり、アスリートでない中高年は、ウォーキングなど適度な運動習慣が重要。
❸休養不足、睡眠不足にならないこと
 ある研究では、睡眠7時間の人が最も長寿だとか。ただ、個人差(個体差)があるので、一概には7時間がベストとは言えない。レム睡眠・ノンレム睡眠の周期が1.5時間とすれば、1.5時間×4~5と考えると、6時間~7.5時間くらいがいいのかなぁ。
❹規則的な生活習慣
 概日リズム(サーカディアンリズム)―体内時計が生命活動にあることを踏まえれば、不規則な生活が身体に悪影響することは明らか。就寝時間、起床時間、食事の時間など概ね一定にするほうが免疫力維持に資するだろう。
❺メンタリティーの安定
精神状態と身体状態は不可分であることは明白であり、強い精神的ストレスは免疫力を弱体化するだろう。現に、ガン細胞を攻撃してくれるNK(ナチュラルキラー)細胞がメンタルストレスで減弱することが証明されているらしい。
まぁ、要するに、生活習慣病の予防・治療のための方法と同一と考えていいだろう。(もちろん、「タバコはゼロ、アルコールは適量」は言うまでもない)

新年のご挨拶

2020.01.01

2020 明けましておめでとうございます
人生100年時代到来と喧伝される現状に鑑み
昭和・平成・令和の3年号を強かに健やかに
生き抜いて参りたいものですね
令和2年もよろしくお願い申し上げます 

「赤ひげ」は船越英一郎の当たり役

2019.12.22

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のTVドラマ論(15)

山本周五郎の傑作小説『赤ひげ診療譚』には昔から少なからず興味はあった。しかし、原作を読んだことはないし、過去に何度も映像化されても観た覚えはない。以前にNHKBSで放映されたのをきっかけに「船越赤ひげ」のファンになってしまった。
今回11月~12月に「赤ひげ2」が放映されたので、全回録画して観た。江戸時代の小石川養生所を舞台に、無骨で謎めいた医師「赤ひげ」と青年医師との交流、そして貧しい患者や市井の人たちの姿を描いたもので、まさに江戸時代版医療ドラマである。
今までも船越英一郎の出演するTVドラマは何度か観たことがあるが、「赤ひげ」はまさにはまり役だと思ったものだ。貧しくて医者にかかれない者たちのために作られた小石川養生所所長・新出去定(にいで・きょじょう)を見事に演じている。こんな面白い「時代劇医療ドラマ」をどうして地上波で放映されないのだろう・・・。
小石川養生所は「救急病院」でもあるわけで、たびたび怪我人(外傷者)が「搬送」され、縫合処置が行われる。麻酔なしで真っ直ぐな針(現代では半円形)で、患者の悲鳴も厭わず縫っていく。当時はこうだったのだろう。医師と患者のとてつもない上下関係も、今昔を感じる。医師は横柄な口をきき、患者は只管謙る。昔はこうだったのだろう、今ではとても考えられない、笑ってしまいそうである。
貧しい者たちの医療に奮闘する赤ひげとその門下生医師たちだが、幕府からは常に予算を削られて、やりくりは四苦八苦。昔から「政府」というのは訳もなく予算を削ることを第一としているようだ。金持ちから高い医療費を分捕って養生所の維持費に充てる赤ひげはかっこよすぎる。

世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」

2019.11.17

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(28)

前回の鉄門旅行の続編。
〈世界遺産・富岡製糸場〉
群馬県では、古くから養蚕、製糸、織物といった絹に関する産業が盛んであった。富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴を構成資産とする「富岡製糸場と絹産業遺産群」は、平成26年(2014年)、ユネスコ世界遺産委員会で「世界遺産一覧表」に記載された。
 「富岡製糸場と絹産業遺産群」は、高品質の生糸の大量生産に貢献し、19世紀後半から20世紀にかけて、我が国養蚕業・製糸業の技術革新や当該分野の世界との技術交流に大きく寄与したものである。
〈富岡製糸場訪問は初めて?〉
この度、群馬在住ながら、初めてこの世界遺産の富岡製糸場を訪れた。が、「初めて」かどうか若干自信がない。というのは、はるか昔の若き官僚時代、群馬県の製糸工場を見学した記憶があるのだ。
〈生糸は農水省所管〉
絹織物は工業製品となるので、当時の通産省(今の経済産業省)所管であったが、蚕(かいこ)、桑、生糸は農林水産省の所管だった。かつて、生糸は、今の自動車に相当するくらい日本の超重要な輸出品であった。上級職国家公務員試験には、「法律」職や「土木」職等と並んで「蚕糸(さんし)」職という区分があり、東大農学部の蚕糸学専攻の優秀な学生が受験した。当時の農林省には「蚕糸局」という局があった。中国等からの安価な生糸の輸入の増加や絹製品の需要の低下により、養蚕業、製糸業はどんどん凋落し、かつての「蚕糸局」が1980年代には「繭糸(けんし)課」と「●●課」(課名を忘れた)の2課に縮小、「農蚕園芸局」の一部となっていた。「繭糸課長」は上級事務官が、「●●課長」は上級技官(おそらく蚕糸職)が務めていた。その頃、数年前に入省していた私は、2つ目の配属先でこの繭糸課にいた。 
〈初めてのグンマは「勉強視察」〉
この繭糸課に異動直後のことだ。「勉強」ということで、当時、全国的に見てまだ蚕糸業の盛んなほうだった群馬県に出張を命じられたのだ(グンマを訪れたのは、このときが生まれて初)。群馬県庁の担当者に連れられて、桑畑や繭倉庫や製糸工場を見学して回った。当時、中央の役人が県を視察というと、やや「旅行、接待」と揶揄される傾向にあったが、この出張は本当に真面目な「勉強視察」だった。夕食くらい(もちろん高価でない)はご馳走になったかなぁ。
実は、私の生まれ育った四国・愛媛も昔は養蚕農家が多かった。私の生家も、私が生まれる前くらいまでは蚕を飼っていたらしい。私が物心つく頃は、村で数軒しか養蚕を営んでいなかったようだ。少年だった私は、桑畑になっていた紫色の桑の実を食べたり、養蚕農家の友だちの家に上がって桑の葉をむしゃむしゃ食べる蚕(まさに「蚕食」)を眼下に観て不思議な気持ちになったりと桑や蚕は身近なものであった。このためだろうか、群馬への「お勉強出張」で記憶に残っているのは、製糸工場で見聞きした、機械音や工員たちの忙しい動きのみであって、桑畑や繭の見学での印象は覚えていないのである。
〈富岡製糸場訪問は初めて??〉
明治5年(1872年)に開業した富岡製糸場は、115年後、昭和62年(1987年)に操業停止した。すると、私の「勉強出張」の時はまだ操業中だったようだ(ぎりぎり)。だが、私がそのとき見学した製糸工場が富岡製糸場であったかどうか覚えていないのだ。今も「現役」の碓氷(うすい)製糸工場だったかなぁ・・・。

「東大王」に謁見

2019.11.13

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のテレビ論(8)

東大医学部の同窓会は「鉄門倶楽部(てつもんくらぶ)」という。現役の学生の担当者たちが、定期的に機関紙を発行したり、2年ごとに同窓会名簿を作成したりしている。中でも最大イベントが年1回行われる「鉄門旅行」。しかし、15歳も年食って理Ⅲに入った私に他の若者ほどの鉄門行事に参加する意欲もなく、今まで(一応、毎年機関紙で旅行案内はある)一度も参加したことがない。群馬が旅行先になることが7、8年ごとにあるようで、以前にも直接メールでご案内を頂くこともあった。今回も担当学生からメールが届いた。今回は、観光先に世界遺産になった富岡製糸場があること(一度も訪れたことない)、そして最近親しくなった群馬在住の大先輩からのお誘いがあったことなどから、初参加することとしたのである。
大きな旅館で、大御所の大先生方や先輩・同期・後輩の医師や若い学生ら多くの参加者(学生が多いのには驚いた)で大宴会があり、その後二次会が行われた。その二次会で撮った写真が標記のものだ。たまたま空いていた席に座ると、なんと隣には今や東大医学部一の有名人の水上颯君がいたのだ。その日もTV収録後駆けつけて来てくれたようだ。
彼の異次元の天才ぶりは、以前の「頭脳王」連覇、そして最近の「東大王」での活躍で熟知していたが、大学のクラス内ではどんな感じなのだろうな(浮いていないかしら)と思っていた。ところが、同年代のクラスメートたちとフツーに楽しく談笑する姿を見るとフツーの大学生、若者に見えたものだ。父親以上くらい年上のオッサンの私とも歓談してくれた。不思議に思ったのは、彼ほどの天才でも「医師国家試験の勉強が大変」とこぼしていたことだ。私から「一度見ただけで覚えてしまうんでしょ」「医師国家試験くらい3日勉強するので受かっちゃうんじゃないの」と投げかけても即座に否定されてしまった。水上颯君は実に謙虚な好青年であった。

IOCの行き当りばったり姿勢には呆れる

2019.10.27

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のスポーツ論(8)

私たちは、今のオリンピックが米国のテレビ局主導の商業主義に汚されてしまっていることを認識しなければならない。昭和39年の東京オリンピックは気候のよい10月に開催された。ところが、近年のオリンピックの開催は暑い7月~8月にばかり開催されるようになってしまった。ちょうどこの時期には、大きなスポーツイベント(米国の野球、バスケットボール、欧州のサッカーなど)がないことが主な理由だという。崇高な精神で始まったはずの近代オリンピックが、米国主導のコマーシャリズムに完全に牛耳られているといっても過言ではないだろう。「選手ファースト」なんて今更言うのか、と思わざるを得ない。ドーハのマラソンの状況を見て変心するのでは行き当りばったりと言われても仕方あるまい。しかも当の東京都に全く打診していないというのだから、そのやり方の稚拙さ、横暴さには驚く。当初の予定どおり、猛暑の東京でマラソンを実施して、ドーハのように棄権者が続出したら、それはそれで商業主義にとらわれない今後の開催時期について議論のきっかけになるのではないか。東京都がコースの涼化に多大な予算を投じているのだからその効果も期待できるし、大会のメディカル担当は選手が危険な状態になる前に棄権させることに全力を尽くさなければならないことは言うまでもない。

大きな自然災害が殆どない群馬県

2019.10.20

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(27)

我が国は、今年も昨年に続き、次々と天災に見舞われている。地震こそあまりなかったが、台風と大雨はひどいものだ。特に過去最大級と言われた台風19号では、100人近い尊い命が奪われてしまった。過去の伊勢湾台風や狩野川台風では千人単位の犠牲者が出たが、それから60年も経た今回は、天気予報技術の向上もあり、そして気象庁等行政の指導(避難勧告等)やマスメディアの盛んな事前報道のお蔭か(建物構造の向上もあるかな)、さすがに犠牲者の数は激減した。犠牲者の方々には謹んで哀悼の意を表する次第である。
魅力度ランキングで毎回最下位争いしている我が群馬県だが、実は、自然災害に関してはとても恵まれていることが、ここに20年以上住んでみて実感する。「海のない県」だから、津波被害は絶対にない。地震もほとんどない。2011年の東日本大震災の際には、ここに80年住んでいる人でも経験したことがないほどの揺れは確かにあったが、大きな被害はほとんどなかった。「南海トラフ」の対象にも入っていないようなので、今後も大地震が訪れる可能性は低いのではないか。豪雨というほどの降雨もあまり記憶にない。特に私の住む県南東部では降雪、積雪もめったにない。数年に1度くらい多く積もることがあるかなぁ。とにかく日本海側県のような豪雪はまったくない。あるとすれば、上州名物の空っ風(外出の少ない私は、あまり実感しない)と夏の猛暑くらいか。その猛暑も、今年は岐阜県あたりに抜かれているようだが。
私は四国に生まれ育った。だから、子供のころ、夏の終わり~秋といえば台風が来るのは当たり前で、まぁ、「慣れっこ」だったと記憶する。18歳以降、関東に住むようになってからは関東にはあまり台風は来ないものだと信じ込んでいたが、ここ何年かは、関東もすっかり「台風の通り道」になってしまった感が強い。しかし、なぜか群馬県には大きな台風被害があまり発生しないのだ。台風19号の前の15号のときも、千葉県には多大な被害をもたらすも、群馬県はほとんど無傷だったような気がする。今回の強大な19号では、さすがに多少の災害はあったものの、他県であったほどの大きな河川氾濫はなかった。標記の地図で見るように西の長野県、東の栃木県など隣県で甚大な氾濫災害が起きているのに、両県に挟まれた群馬県の被害は小さかったようだ。
地球全体が異常気象に覆われることが多くなってきているこの頃、今回の19号が「100年に1度」の台風と呼ばれていたが、来年以降、近いうちに、同レベル又はそれ以上の台風が襲ってくる可能性は否定できないだろう。グンマだっていつまでも安泰ではないだろうと覚悟するこの頃である。

「超資源大国」アメリカは「超肥満大国」でもある

2019.09.01

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(29)
〔超弩級肥満がたくさん〕
13年前にカリフォルニアを訪れた際にはそんなに感じなかったが、今回、多くの客でごった返すフロリダディズニー内を歩き回って最も驚いたのはアメリカ人の肥満のひどさだ。欧州で見かけた肥満の比ではない。
男性のリンゴ型肥満はもちろん、女性の洋ナシ型肥満の巨大さには舌を巻いてしまった。女性でいうと、幼児期~少女期の年齢では、細くて長い脚でイメージどおりの白人(我々日本人が抱く白人コンプレックス?)像なのだが、中年となるとその面影は微塵もなくなっている。わかりやすく言えば、東京ディズニーランドのショーで見るような(フロリダディズニーも同様)すらりとした白人ダンサーの体形の成人女性はあまりお目にかかれない印象だ。白人だけではない。多くの有名アスリートのイメージからか、黒人は細くて肥満は少ない先入観があったが、とんでもなく太った黒人男女も多く、人種は全く関係ないようだ(アジア系らしい超肥満人はあまり見かけなかったかな)。
日本では身障者が乗るような小型電動車に乗る肥満健常者を幾人も見かけた。多数の電動車がパークの入口に1日70ドルで貸し出しされていた。確かにあの広いパーク内を巨体で歩き回る(1万歩~2万歩)のはキツイに違いなく、1日8000円くらい払っても・・・ということなのだろう。
(ちなみに、tattoo刺青を入れている人が多いのが印象的だ。中でも漢字が目立った。何年か前に、フランスで「魚」などわけのわからない刺青を入れている若者が幾人もいて笑ってしまったが、今回も「傑作」がいた。大きく「殺伐」と背中にある人を2人も見かけた。その意味を認識してはいないだろうなぁ。)
〔アメリカを蝕む肥満という病〕
アメリカ在住が長い日本人の方の話では、アメリカ政府は肥満対策を講じているらしいが何の成果もないように思える。世界一の医療先進国なのだが、甘いコーラを飲み、糖質たっぷりのポテトチップスを食べながら横になって運動しないfatty米国人のイメージがぬぐい切れない。こんな身体では、生活習慣病でかなり短命ではないかと思われるが、意外に平均寿命は78.5歳くらいでそれほど短くない、高い医療水準によるものか・・・。
ある情報では、アメリカの学校には、コーラだかポテトチップスだか、無料で生徒に供給する機械が置いてあるところがあるという。こういうものが肥満を助長し、アメリカ人の健康を蝕んでいるという社会的批判を懐柔するUSA大企業の戦略ではなかろうか。
〔日米で肥満の基準が異なる〕
 私たち医療者が、患者さんの太りすぎが痩せすぎかの目安にするのは、一般的にBMI (Body Mass Index)を用いる。体重(kg)を身長(m)の2乗で割る計算式だ。BMIの計算式は世界共通であるが、肥満の判定基準は国により異なる。世界保健機関(WHO)や米国国立衛生研究所(NIH)などでは、BMI:25以上を「過体重 (overweight)」、30以上を「肥満 (obese)」としている。概ね多くの主要国ではこの基準を採用しているらしい。

●世界保健機関(WHO)の基準
状態    指標
痩せすぎ 16.00未満
痩せ    16.00以上、16.99以下
痩せぎみ 17.00以上、18.49以下
普通体重 18.50以上、24.99以下
前肥満    25.00以上、29.99以下
肥満(1度)30.00以上、34.99以下
肥満(2度)35.00以上、39.99以下
肥満(3度)40.00以上

しかし、日本肥満学会では、BMI:22の場合を標準体重としており、25以上の場合を肥満、18.5未満である場合を低体重としている。
●日本肥満学会の肥満基準(2011年)
    状態    指標
    低体重(痩せ型)18.5未満
    普通体重  18.5以上、25未満
    肥満(1度)25以上、30未満
    肥満(2度)30以上、35未満
    肥満(3度)35以上、40未満
    肥満(4度)40以上

要するに、アメリカと日本とでは医学上の肥満の基準が大幅に異なる。BMI27(例えば身長170㎝、体重78kg)は、日本では文句なしで肥満に該当し、アメリカでは「前肥満」(肥満予備軍か)という範疇で肥満には該当しないことになる。ただ、私が今回目の当たりにした多くの重量級の方々は、殆どBMI30は軽く超えていたに違いない。ネットでも次のような興味深い記事が掲載されていた。

「増え続ける米国人の体重、BMI平均30の肥満目前
2018.12.21 Fri posted at 15:35 JST」
https://www.cnn.co.jp/fringe/35130502.html

〔超資源大国だから超肥満大国なのか〕
 別に「アメリカファースト」を支持する気は更更ないが、アメリカは資源大国であることは間違いない。アメリカ人に「省エネ」なんて意識も概念もないのだろう。日本語の「勿体無い」をぴったり英訳できる英単語、英熟語がないのも頷ける。室内の冷房温度はなんと15℃に設定されているから、猛暑の室外から建物内に入る際には手持ちの上着を羽織らないと風邪ひきそうで怖い。「水は貴重」と水道水の無駄遣いを注意する欧州と違って、どちらかというと「水は使い放題」の印象だ。トイレのペーパータオルも使い放題、ペーパー供給器械の下のごみ箱の大量の使用済みペーパーが目に付く。
このように「節約精神」がないから、体内に入れるものも節約しない=歯止めがきかない→体内蓄積が大量になってもどんどん体内に供給→皮下脂肪・内臓脂肪増加で肥満となる、という循環が成り立つのではなかろうか。

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