・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(15)
〈本当に国民は高い国内産米を買うのだろうか〉
読売新聞社の全国世論調査によると、今後の農業再生に強い期待があることがわかった。TPP(環太平洋経済連携協定)に「参加すべきだ」という意見が「参加すべきでない」を上回るなど、農家の規模拡大等農業生産性を上げれば日本は世界の農産物市場競争の中で十分戦えるという考えの人が多いことが判明した。
果たしてそうだろうか。工業と違い、生産要素たる土地に大きく依存する農業という分野で、狭い国土の日本が米国に伍するとは考えにくい。
(89%の人が「値段が高くても国内産米を買う」というが、本当かなと懐疑的にならざるを得ない。なぜなら、仮に778%の関税撤廃が実施されれば価格差は単純に8倍近くとはならないまでも相当の価格差は生じるだろうから。)
〈「脱原発」せずに日本の農産物が海外で売れるのか〉
もっと不利なことは、福島第一原発事故の「後遺症」がいまだ強く残っていることだ。現内閣が「脱原発」の方針を旗幟鮮明にしているわけでもなく(前首相の発言は反故にされている)、福島県産の米からは基準値を超えるセシウムが検出されている。農地の除染が速やかかつ適切に行われているとは言い難い。このような状況下で日本の農産物を「おいしくて安全だ」と言って外国に売り込むことなどできるだろうか。
狭隘な国土にあって、農業を高品質と安全性で輸出産業のレベルまで引き上げるには、原発事故の負のイメージを払拭しなければならない。そのためには、農地の徹底除染を早急に行うのが絶対条件だが、地震国日本にあって今後大地震や津波が起きても放射能汚染があり得ないことを示すために脱原発を政府は表明してほしい。
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