・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(11)
政府が、環境省に原子力規制行政を担う「庁」を新設する検討に入った。経済産業省の原子力安全・保安院を同省から分離し、内閣府の原子力安全委員会と合わせて移行するという。福島第一原発事故から五か月近くなっているだけに遅きに失した感は否めないが、この方針はまずは妥当だと考える。
昔、環境省の前身である環境庁は、小所帯、権限が乏しい、利権がない、天下り先がないなどの理由で、国家公務員Ⅰ種志望の学生の間で人気は低く、他の省庁は十数人~数十人の採用なのに、同庁はわずか数人の採用だった。しかも、同庁発足以来長らく主要ポストは他省庁(当時の大蔵省、通産省、農林水産省など)からの出向者に占められていたし、それ以下のレベルでも多数出向者がポストを占め、あたかも各省庁の「植民地」のようであった。このような出向者は、ややもすると親元省庁のほうばかり向いて仕事をし、純粋な環境行政を怠る傾向にあった。
このことに鑑みれば、新設される原発規制庁は、利権や親元官庁の意向にばかり気にする出向官僚を完全に排除し、真に環境行政だけに専念する官僚で固めてほしい。
そのためには、まず、原発推進官庁の経済産業省からの出向者を一切受け入れないこと、更には、今の環境省に原子力に詳しい人材が乏しいことを踏まえ、民間企業や大学から原子力工学や放射線防護等の専門家を、出向者でなく、終身国家公務員として雇い入れることが適当であると考える。