2011.07.29
・・・・・・・・河辺啓二の教育論(3)
今日、ほとんどの国民は、改めて「日本は地震大国だ」という認識を強めている。
地震に関する学問の基礎は地学なのだが、現在の高校ではその地学がほとんど教えられていない。私たちの世代は、高校生のとき、理科は4科目(物理・化学・生物・地学)履修が義務付けられ、地学に関しては、大学入試用に選択しなくても、週1回程度の授業と定期試験が課せられていたものだ。
ところが、「ゆとり」世代になってからは、理科は2科目履修でよくなり、最も不人気の地学の授業が行われている高校が珍しくなり、地学教師は専門外の生物を教える、といった状況になっている。地学が入試で選べない大学も少なくなく、高校の地学を全く勉強していない人が普通というのが現状である。
地学は、地震学のみならず、地質学、火山学、海洋学、気象学、天文学、地球物理学など多岐な学問をカバーする学問であり、高校生時にこれらの基礎を学ぶことは大変意義があると思う。
特に、日本のような地震大国であるにもかかわらず、高校時代、地震に関する学問に一切触れずに卒業してしまうというのはいかがなものだろうか。
今回のような大惨事を経験すると、地震学研究の予算的人的充実強化が求められる。現行のような教育体制が何十年も続くと、将来、地震学の優秀な研究者の数が保たれるのか不安でしかたがない。