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誤った「英雄」報道

2010.12.23

・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(3)

前々回のブログで尖閣諸島沖衝突ビデオ流出海上保安官を「英雄」と呼んだ。その私の考えは変わらない。

今年起きた事件の中で「英雄」という言葉で思い出されるものが2つある。こちらのほうは、どちらも不適切な表現だと私は思っている。

まず、8月~10月に起きたチリ落盤事故33人救出劇だ。世界中を驚かせた事件であることは確かだし、約70日間の過酷な地下生活を耐え抜いた作業員らは「英雄」と称されるのも、ある程度理解できる。

しかし、「英雄」って何だろう。広辞苑では「文武の才の特にすぐれた人物。実力が優越し、非凡な事業をなしとげる人」と記されてある。ただ、私の「英雄」観は、「他人のため、社会のため、傑出した貢献をした人」だ。とすると、苦しみながら過酷な地下生活を全うしたのは、死にたくないという本能、そして生き続けて地上に出て家族に再会したいという願望が原動力でなかったのか。他人のため、社会のため貢献したとは、とても言い難い。現に、救出後の取材に高額謝礼を要求する人もいるという。「英雄」とはほど遠い行為である。彼らを「英雄」と称したマスメディア・チリ社会に強い違和感を抱かざるを得ない。

繰り返すが、ビデオ流出海上保安官の行為が英雄的なのは、もし発覚したら職を失うかもしれない、妻子は路頭に迷うかもしれないと認識しながら、ビデオ流出を敢行したことである。

もう一つの、不思議な「英雄」は、その尖閣諸島沖衝突の、あの、とんでもない酔いどれ船長である。もちろん、「英雄」視しているのは、中国メディアと中国国民のみであるが、われわれ日本人から見て不快極まりないものだ。「異質大国・中国」のやることだから、笑ってすませないといけないのか・・・。そう言えば、先日TVで、遊園地のキャラクターなど「パクリ」が後を絶たない中国を「最大のパクリは、資本主義」と評したコメンテーターがいたが、なるほどうまい表現だと大いに共感してしまった。