・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(1)
今や日本中の国民は、2人の日本人のノーベル化学賞受賞に狂喜し、日本の科学水準の高さに鼻高々の状態だが、決して浮かれてはならない(かくいう私も、実は、根岸英一先生は、私の1度目に卒業した東大工学部応用化学の大先輩であるだけに嬉しかった)。これらの素晴らしい研究は、何十年も前に行われていることを認識すべきだ。
2000年代になって日本人の化学賞・物理学賞があたかも受賞ラッシュの様子を呈しているが、これらすべてが数十年も前の研究開発実績であって、何も2000年代の日本の科学技術水準が高いことの証(あかし)ではない。
近年の我が国の科学技術水準の国際的な相対的劣勢は度々報じられている。科学研究論文被引用数で、日本は停滞し中国は大躍進しており、ある大学ランキングでは東大がアジアトップの座を香港大に明け渡し、電気機器産業では、例えば、薄型テレビ市場で、日本企業が韓国企業に完全に抜かれてしまっている。将来の科学技術を担うべき学生についても、理科離れが進行し、更には学力全体が低下し、(科学オリンピックで一部の日本人学生が活躍するも)中国や韓国の後塵を拝する状態となっている。
今のような状態が継続すれば、数十年後には、日本人ノーベル賞受賞者が僅かで、中国・韓国人受賞者多数という事態となるであろう。
政府は、近視眼的な科学技術振興予算の削減策を是正し、研究予算を拡充するとともに、ゆとり教育を根底から見直しし、学力向上策、理科離れの強力な歯止め策を早急に講じてほしい。