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「花の都パリ」は「信号無視」の「喫煙天国」だった!

2009.08.21

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・・・・・・・・・・・・河辺啓二の旅行記(1)

この夏、21年ぶりにフランス・パリを訪れた。
初めて同地を訪れた前回は、若き官僚時代、スイス・ジュネーブにILOの国際会議に日本国政府団の一員として数週間滞在した際の週末観光であった(このときはTGVで行った)。
前回と今回との違いは、まず、前回は政府のお金、つまり税金が原資だった(ジュネーブまでの渡航費及びそこでの滞在費が国費であって、パリ観光については自費である)が、今回はすべて身銭だということ、次に、前回は独身で一人で1泊2日の観光だったが、今回は妻子とともに6人で観光2.5日、ディズニーランド2.0日にわたり、ほぼ5泊6日滞在したこと、そして、前回はフランス語の知識ゼロだったのが、今回はある程度(仏検3級~準2級レベル)知識があったことが挙げられる。

〈花の都は、実は煙害の都〉
さて、20年来の憧れの都市・パリであるが、予想外にdirtyな都市であった。パリの中心街の道路を歩くと、ここかしこにタバコの吸い殻が落ちている。歩きタバコのパリっ子が闊歩している。特に女性のsmokerが目立つ。幼い子供を連れ歩くも、右手に子供の手、左手にタバコなんて様はざらにあった。お父さん、お母さん、そんな小さいお子さんに受動喫煙直撃させてどうするの・・・。
〔普段、ほとんど戸外に出ず、smokeゼロの環境の中で仕事・生活している私は、タバコの煙に極めてsensitiveになっていることは否めない〕
とにかく、一視野当たりに必ず一人はタバコ吸っている印象だ。パリの中心街だけではない。ベルサイユ宮殿だろうが、今人気のモンサンミッシェルだろうが、建物内はさすがに禁じられていたが、外ではタバコの臭いがどこからかやって来るのだ。就中ひどいなぁと感じたのは、幼い子供が多く訪れている「夢の国」パリ・ディズニーランドだ。キャストが掃除するためか、路上に吸い殻はあまり見かけなかったが、(アトラクション内は禁煙だが)アトラクション外では、どんなに人込みでごった返しても誰かは煙を発していた。日本の東京ディズニーランドを見習え!と言いたい。タバコ嫌いな息子は「空気が汚い」と憤っていた。
フランス人にも、他国からの観光客(フランスは世界一の観光大国で人口6千500万に対し、国外からの旅行者は年間7千万人を超えるという)にも、私のような嫌煙者がいるはずなのだが、他人から煙を吸わされても、誰もイヤな顔をしない。もちろん、注意する人間なんているはずもない。我慢しているのかしら。
こんな喫煙大国なのに、フランス人の女性の平均寿命が、日本、香港に次いで世界第3位(84.1歳。2008年WHO統計)だとは信じられない・・・。

〈ポイ捨てする道徳心のないフランス人の名案〉
吸い殻のポイ捨てだけではない。ディズニーランドの緑地帯に空のペットボトルが何個も捨てられているのを目撃した。東京ディズニーランドの中ではほとんど見られない光景だ。キャストも手が回らないのかなぁ。
そういえばパリの街の中ではタバコの吸い殻ほどペットボトルが落ちていなかった。それには理由がある。通りに沿っていくつものゴミ袋が設置されているのだ。「ゴミ袋が設置」って?そう、ゴミ箱ではない。透明なごみ袋がリング状の金属に広げてぶら下げられているのだ。これだとあのオウム事件のように怪しいモノを中に入れるわけにいかない。これは妙案だと思う。日本の地下鉄も参考にしたらどうだろうか。

〈「赤信号一人で渡っても怖くない」〉
吸い殻ポイ捨てに罪悪感を全く持たない道徳観は、交通ルールを守らない感覚にも連結する。とにかくフランス人は、信号を守らない。信号が赤だからと待っているのは、我々一行くらいだった。赤信号でもみんな平気で横断歩道を渡る。「赤信号みんなで渡れば怖くない」どころか、たった一人でも怖くないようだ。信号無視は歩行者だけではない。私が青信号だとのんびり渡っていたら、車が突っ込んで来たので、あわてて渡り終えたことがあった。ひどいものだ。信号そのものも不親切。青信号の時間が短い上、時間が迫ると(日本のように)光が点滅することもなく、警戒音が出るわけでなく、ぱっと赤信号に変わる。脚の弱い高齢者だとどうなるのだろう・・・(ただ、訪れたパリ中心街、観光地、ディズニーランドにあまり高齢者は見かけなかった)。

〈税金の無駄遣いは日本と同じか〉
まぁ、このように「信号無視」したくなる気持ちがわからないではない。とにかく信号機が多い。日本では通常ないような、ちょっとした小径同士でも設置されている。誰も見やしない信号機に税金を投じて大量に設置する仏政府のオツムはどうなってのだろうか・・・。
パリ中心街の建物は中世風の建物ばかりで、「ぱっと見」は20世紀、21世紀とは思えないほどだ。近代的ビルが立ち並ぶ「新興」都市の東京やソウル、香港などと街の景観が全く違う。自国の文化・歴史に限りなく自信を持つフランス人の誇りの現われであろうか。(街の中に、いくつも、ナポレオン、ジャンヌダルクなど歴史上の人物の銅像が置かれてあるのも、東京等東洋の大都市と大いに異なる。)古い、又は古風に見せた建物をメンテナンスしているのだろう。建物をあんなにきれいに維持しているのに、なぜ、街路はタバコの吸い殻を放置して汚くしているのかしら、と妻は不思議がった。

〈世界に名だたるフランス料理って・・・〉
フランスといえば、フランス料理。高級レストランに行くほどの富裕層ではないので、中程度のレストラン(決して安くはない)で食事したが、イマイチの感は拭いきれない。特にビーフがお粗末。ナイフで切れにくい。味も大したものではない。食料自給率100パーセント以上を誇る「農業大国」フランスのこと、自国産の牛肉だろうが、和牛はおろか、オージービーフに劣る味だった。魚料理なら、なんとかいただける味だった。もちろん、ライスは、例のパサパサのインディカ米で食べられるものでない。帰りの機内で食べたコシヒカリのなんと美味しいことか!

〈日本ファンは増えても、日本経済の陰は薄く・・・〉
 21年前にヨーロッパに来た際は、あちこちに「TOYOTA」や「HONDA」の車が走っていたし、日本人観光客も多く、日本語の表示をよく見かけた。当時の日本経済力の大きさを感じ、やや誇らしげな気持ちになったものだ。ところが、今回は、日本車はめったに見かけないし、日本語表示も少ない気がした。観光ガイドさんの話では、昨今の世界不況の中でも日本経済不調の表れか、日本からの観光客は減少しているとのこと。
〔ちなみに、ディズニーランドの入り口でもらえるガイドマップに(USAと香港にはあった)日本語版はなく、仏英西独伊蘭の6か国語版しか置かれてなかったことが、同ランドへの日本人入場者の少なさを物語っていた。〕
 ただ、唯一「お、ニッポンもやるな」と感じたことがある。ルーブル美術館の中でのことだ。一番人気のモナリザ(これは込んでいた。近くに寄るのが大変)及び二番人気のミロのビーナスの展示所に「改修工事が日本テレビの援助により行われました」という掲示があり、我が国ニッポンも、かつて「エコノミックアニマル」と揶揄された時代を乗り越え、文化にカネをかけるようになったものだ(何らかの思惑はあるだろうが)と、嬉しい気分になった。
日本アニメやJUDO、更には日本食(ラーメン屋にもお客がいっぱい)のファンが多いフランスでは、日本に興味のある人は多いようで、ディズニーランドのレストランのウェイトレスさんが盛んにカタコト日本語を話すなど、微笑ましい場面によく出くわしたものだ。
更におもしろかったのは、漢字の刺青をしている若者が結構いたことだ。「愛」とか「吉米」とか、意味もなく彫っている。USAでもいたが、欧米人にとって、漢字は形そのものがARTらしい。そういえば、以前USAで「魚」と書いている人がいたなぁ。漢字の字体から見て、本場中国の簡易体でもないし、香港・台湾の旧字体でもなく、日本の漢字体のようだ。
このように、文化的には、以前より日本は欧州に「侵略」してきているようだが、経済においては劣勢のようだ。帰りのシャルルドゴール空港内で見かけた夥しいほどのTVの液晶画面は、すべて韓国のサムスン製であった。残念ながらPanasonicもSONYも1個も設置されてなかったのだ。

〈蛇足①:フランスはUSAより人種のるつぼ〉
 アメリカ合衆国、特にニューヨークなど、よく「人種のるつぼ」と言われていたものだが、USA西部しか行ったことのない私から見れば、カリフォルニアなんかより、よっぽどパリのほうが「人種のるつぼ」のような気がする。旧植民地の北アフリカから来て働く黒人の数がとても多い(例えば、エッフェル塔の周りには、非合法に観光客に土産品を売りつけようとする黒人達が無数にいた)。フランスにおけるイスラム教徒の数は膨大らしく、パリ市街地には、いかにもそれらしい中近東人が歩いていたものだ。私らのような東洋人は少数派だった。

〈蛇足②:フランス人は英語をわざと話さない?〉
 21年前、パリの地下鉄の切符売り場でお釣りがひどく少ないことに文句をつけるも、英語が全く通じず、頭に血が上ったことがある。今回は、ある程度フランス語の勉強もして訪れたが、実際はどこでも英語が通じた。「フランス人は英語をわざと話さない」というのはウソだとガイドさんが流暢な日本語で話していた。ただ、英語教育は日本ほど盛んでないらしい。学校でも英語が必修でなく、ドイツ語など学習する生徒も多いとか。要するにビジネスのためにしっかり英語を勉強した人たちが増えたということだろうか。
〈結語:やはり日本がイチバン!〉
やはり日本が一番。
以前に比べ公衆での喫煙者が減っているし、吸い殻をポイ捨てする馬鹿者もフランスに比べ、ずっと少ない気がする。
食べ物も日本のものが一番うまい。国産和牛より美味しい牛肉ってあるのだろうか。炊きたてのコシヒカリよりうまいお米ってあるのだろうか。
(更に言うと、日本には、あの煩わしい「チップ」の習慣がないのがよい)