・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(17)
2020年東京五輪に向けて、都が飲食店などでの禁煙を条例化する動きが失速しているという。東京都の検討会で、条例化を望む医師会等に対し、顧客減少を危惧する飲食店や宿泊施設の業界団体が反対し、条例化が困難な情勢のようだ。
日本は、外国に比べ、酔っぱらいとスモーカーに寛容な国であると言われ続けてきた。受動喫煙がガン、脳卒中、心筋梗塞、気管支喘息等に罹患するリスクを高めるとの科学的証明がなされても、未だ全面禁煙の店舗は少なく、せいぜい分煙対策が講じられている程度だ。しかし、分煙では副流煙のノンスモーカーの体内への侵入を防げないのは明白だ。十年ほど前に制定された健康増進法で受動喫煙対策が盛り込まれたが、罰則のない「努力義務」止まりだった。当該規定がどれほど私たち国民の健康の増進に寄与したか疑わしいものだ。
これから五輪が開催される、16年のリオデジャネイロも、18年の平昌も、そして近年開催されたほとんどの都市で、飲食店等の全面禁煙(罰則付き)となっている。東京がこの禁煙の流れを断ち切るとなれば、日本人はヒトの健康よりカネ儲け-経済を優先するエコノミックアニマルと揶揄されることであろう。
全面禁煙による重大疾患罹患リスクの軽減により医療費が削減されるという医療経済上のメリットに鑑みれば、全面禁煙化を規定する際に、喫煙室設置に公的助成を行うなどの救済措置を講じるのも一法だろう。ひとり東京都だけの問題でなく、東京都の動向が全国の自治体に与える影響を考えれば、健康増進法一部改正をも視野に国・厚生労働省も含めて、政治・行政が一体となって検討してほしい。