・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の映画論(5)
日本一の映画スターと言っても過言ではない高倉健が83歳で亡くなった。11月10日に悪性リンパ腫でなくなるも、公表されたのは1週間以上も後の18日であった。その頃、マスコミは衆議院解散、総選挙の話題が中心だったが、突如の「巨星落つ」の訃報で、数日はこちらのほうのニュースが大きくなった。私も政局報道より高倉健報道のほうが気になった。そういう人も多かったと思う。
私よりもう少し世代の上の男性たちにとって大きな衝撃であったろう。高倉健若き頃は、いわゆるヤクザ映画で一世を風靡していた。そういう映画を観て痺(しび)れていた世代だ。私はヤクザ映画を観たことがない。高倉健の映画を初めて観たのは、一昨年の「あなたへ」だった。モノマネのネタにつかう大滝秀治(没年87歳)の遺作は高倉健の遺作にもなった。亡くなった妻を演じる田中裕子が50歳代で、刑務所の技官という現役公務員役だから、おそらく60歳代前半~半ばくらいという年齢の設定ではなかったか。当時81歳の高倉健がなんの違和感もなく60歳代前半を演じていた。背筋はピンとし、お腹は全く出ていない。要するにカッコイイと若く見えるということだろう。年寄り役がよく似合う大滝秀治ではムリがある。
あんなに若く元気そうな高倉健が亡くなるなんてと思うも、83歳といえば、日本人の平均寿命をとっくに越え、多くの同世代の男性は既に鬼籍に入っているか、寝たきり老人となっている。加齢とともに強くなって行くガン細胞が、彼の体内で活発化することもやむを得ないかもしれない。
高倉健主演の映画は、映画館で観たのは、上述の「あなたへ」のみで、昨年当たり、DVDの「幸福の黄色いハンカチ」を、この1週間で追悼TVの「南極物語」「駅STATION」、そして再度「あなたへ」を観た。いずれも、よき「日本の映画」だなぁという感想だ。数々の賞を取った「鉄道員(ぽっぽや)」をいつか観たいと思う。
私を含む多くの中年以上のオトコたちは思う。年取ったら高倉健みたいにカッコイイお爺さんになれたならぁ――まぁ、実現不可能だけど。