2014.02.01
・・・・・・・・・河辺啓二の教育論(10)
政府は、高校等の教育において英語と日本史を重視する姿勢を見せてきた。確かにグローバル化する社会で世界共通語の英語力を高めることは重要だし、日本人でありながら日本の歴史をろくに知らない若者が増えてきている現状に鑑みれば、至極当然の方針であることは間違いない。
ただ、私が危惧するのは、これらの科目教育の重視により、他の教科、特に数学や理科といった理系科目がしわ寄せを喰って授業時間が減りはしないかということである。高校の授業の1週当たりの授業時間には一定の限度があり、英語や日本史の教育充実が授業時間数増加につながり、ひいてはその分理系科目の時間数減を引き起こすことはないだろうか。
いうまでもなく、我が国は、科学技術立国であり、若いときに理系科目の教育を十分受けた科学者、技術者たちが今の日本の繁栄を支えてきたと言っても過言ではない。今世紀になってノーベル賞の自然科学部門の受賞者の数がアジアで突出しているのも、近代・現代の日本の科学教育が優れていたことの傍証ではないか。「ゆとり教育」が見直され、今後、数学と理科が元のように充実強化されようとしているときに、英語・日本史教育強化の「犠牲」となって再び弱体化されることのないよう強く希望するものである。(524字)