・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(21)
ノロウイルスによる感染性胃腸炎が現在大流行している。これが原因で死亡者も出るほどとなっている。残念ながらノロウイルスにはワクチンも特効薬もなく、制吐剤や整腸剤、あるいは点滴等による対症療法しかなく、根治の治療法がない。手洗いなど予防策の励行しか対策のない状況が続いている。
せめて、ノロウイルス感染の診断は、インフルエンザのそれのように、各医療機関で簡単に行われるものと思いきや、実はそうではない。それらしい患者さんに「ノロですか」と詰問されても、私たち医師は症状等から「おそらくノロでしょう」としか言えない。
というのは、ノロの場合、インフルエンザと同様な15分で判明できる検査キット(糞便用)が4種類ほど実用化されてはいるものの、インフルエンザのように、どの患者さんにでも確定診断のための検査が健康保険でできるわけではないのだ。①3歳未満の患者、②65歳以上の患者、③悪性腫瘍の診断が確定している患者、④臓器移植後の患者など、保険の適用範囲が非常に狭くなっており、大部分の患者さんには適用できないのが現状なのである。
感染力の強さや重症化の可能性に鑑みれば、診断のための検査がインフルエンザには保険適用され、ノロには原則的に不適用というのは納得がいかない。厚生労働省は、インフルエンザ並みにノロウイルス検査に保険適用するよう、速やかに措置を講じてほしい。
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昨年12月、上記の投稿文を読売新聞「気流」に投稿したところ、年開けて1月8日(火)に連絡があり、修正の上、10日(木)に掲載されました。投稿してから20日ほど経っており、てっきりボツだと思っていただけに嬉しい気がします。新聞社も年末年始で通常のペースでなかったからでしょう。
(朝日新聞「私の視点」を除き、朝日「声」や読売「気流」は、採用候補になれば、通常、投稿後1週間以内には連絡が来る。だいたい2、3日のことが多い。)
内容的には時宜を得た話題であり、ノロ検査がインフルエンザ検査と同様に容易に受けられると誤解されている多くの患者さんに対する啓蒙になったのではないかと自負しています。