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子宮頸がんワクチン対策の充実は少子化対策となる

2012.08.22

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(HPV抗体価測定法の早期確立を望む)

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(20)

子宮頸がんは、女性に特有のがんのうち乳がんに次いで罹患率、死亡率が高い。日本では年間約8500人が新規に診断され、約2500人が死亡している。ごく初期の場合を除き子宮摘出術が施行されるため、妊娠・出産が不可能となる。日本では、最近、出産年齢に当たる20歳代、30歳代の若年層で子宮頸がんの発生が増加する傾向にあり、少子化傾向に少なからず影響を及ぼしているように思われる。
子宮頸がんの主因がヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが1980年代に明らかとなり、HPVワクチンによって子宮頸がんの一次予防が可能となった。つまり、子宮頸がんは予防可能ながんの一つとなったのである。
2006年にHPVワクチンが開発されてから、世界中で急速にワクチン接種による子宮頸がん予防が広がってきており、日本でも2009年10月にワクチンが承認され、当初任意接種だったが、2010年度からワクチン接種緊急促進事業として若年女子に対する公的負担が開始された。
当該緊急事業は、今年度末まで期間が延長されているが、これが恒久化されるべく、2013年度にも定期予防接種の対象とする方針を、最近厚生労働省が固めた。「ワクチン後進国・日本」も、やっと欧米の先進国の水準に並ぶこととなる。
しかしながら、現在2つのワクチン(二価ワクチン:HPV16型・18型、四価ワクチン:HPV16型・18型・6型・11型)が接種されているが、それによる実測免疫持続期間は6年~8年程度しか追跡がなされていない。(統計的手法で算出し「推計値」は20年あるとはされているが。)果たして中学1年生に接種したワクチンによる免疫が彼女たちの性的活動が高まる20歳代にまで持続しているかどうかは不明のままである。
例えば、かつて日本では麻疹ワクチンは幼少期の1回接種のみだったのが、10歳代、20歳代の年齢層を中心として罹患するケースが増えたことから、1回接種を見直し、2006年度から、風疹と合わせてMR混合ワクチンとして、中学1年又は高校3年で2回目の接種を、また、未就学児には、1歳時と年長児時に計2回の接種を、公費で行われることとなった。ワクチンによる免疫は、途中にブースター(免疫を高めること)がなければ通常減弱していくのだ。麻疹も風疹も抗体価を容易に血液検査で測定でき、片方の抗体価が十分に高ければ、低いほうの単独ワクチンを接種することも可能だ。2007年のときは麻疹流行だけで済んだが、HPVワクチンは、人命を奪う可能性の高い、そして命が助かっても出産不可能ならしめる子宮頸がんのワクチンだけに、麻疹ワクチンより重要性が高いと思う。
ところが、HPVの国際標準的な抗体価測定方法は未だ確立されておらず、外国の研究機関が保持する特許の「縛り」から、我が国では抗体価測定できる検査会社がないのが現状である。我が国の医学研究レベルの高さに鑑みれば、政府が大学医学部等を後押しすれば当該検査法の確立は実現可能ではないかと考えられる。
産婦人科、小児科の医療現場では、ワクチン接種後6年~8年以降のことはよくわからないという現状にある。すなわち、HPV抗体価の検査法の確立を図るとともに、麻疹の二の舞とならないようブースター接種に関する研究を深化させ、その対策を早急に講じてもらいたいのだ。もちろん、ワクチン接種のみですべての子宮頸がんが予防できるわけでない。政府は、がん検診率を高めるための普及啓蒙の促進も同時に行うことは言わずもがなである。さすれば、子宮頚癌罹患者が減少し、出生率上昇につながるのではないか。
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上記の内容を、5月末に朝日新聞「私の視点」に投稿したところ、6月に連絡が来て、以後担当者と協議・修正しつつ、また、数度の掲載延期(新聞という性格上、大きい事件があれば、そちらが優先されるのが当然)を経て、8月21日掲載となりました。
一昨年の日本脳炎ワクチン問題、昨年の降圧合剤問題に続き、3年連続3度目の「私の視点」掲載です。
同紙「声」に比べ影響力の大きい同欄だけに、嬉しい。