・・・・・・河辺啓二の医療論(17)
人気芸人の家族の不適切生保受給問題は、現在の生活保護制度の仕組みや運用のあり方を見直す契機となりそうである。
そこで、注目しなければならないのが、生活保護費の国庫支出における医療扶助費の割合が約50%もあることだ。この経費の中には、不必要なものが相当含まれていると思われる。
知り合いの医師に聞いた話だが、昔、彼がある病院の勤務医だったとき、経営者から生活保護受給者の患者さんには、必要不必要にかかわらず、毎月CT検査等診療報酬の高い検査を行うよう指示され、しぶしぶ検査を行っていたという。明らかに不要で過剰だなぁと思われることも多々あったらしい。(最近の言葉でいえば、当該経営者の手法は、生活保護を食い物にする「貧困ビジネス」と揶揄されるものかもしれない)
昨今の景気低迷で収入の減った患者さんも多く、高価な検査施行あるいは高価な薬剤処方を考えるとき、ある程度は患者さんの懐具合を考慮しなければならないことがある。これに比し、生活保護受給者の患者さんの場合、その負担金はゼロであるため、(懐具合を)全く考慮することなく、しかも診療報酬は国と自治体が負担するので取りっぱぐれがないため、医師・医療機関にとって、とてもありがたい「お客さん」になっているのが実状である。
私たち医療機関は、経営本位に立つことなく、生保受給者だからといって、不要・過剰な検査や処方を行うことを厳に慎むべきである。そうすれば、生活保護費がかなり削減できるのではないだろうか。