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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のTVドラマ論(15)
山本周五郎の傑作小説『赤ひげ診療譚』には昔から少なからず興味はあった。しかし、原作を読んだことはないし、過去に何度も映像化されても観た覚えはない。以前にNHKBSで放映されたのをきっかけに「船越赤ひげ」のファンになってしまった。
今回11月~12月に「赤ひげ2」が放映されたので、全回録画して観た。江戸時代の小石川養生所を舞台に、無骨で謎めいた医師「赤ひげ」と青年医師との交流、そして貧しい患者や市井の人たちの姿を描いたもので、まさに江戸時代版医療ドラマである。
今までも船越英一郎の出演するTVドラマは何度か観たことがあるが、「赤ひげ」はまさにはまり役だと思ったものだ。貧しくて医者にかかれない者たちのために作られた小石川養生所所長・新出去定(にいで・きょじょう)を見事に演じている。こんな面白い「時代劇医療ドラマ」をどうして地上波で放映されないのだろう・・・。
小石川養生所は「救急病院」でもあるわけで、たびたび怪我人(外傷者)が「搬送」され、縫合処置が行われる。麻酔なしで真っ直ぐな針(現代では半円形)で、患者の悲鳴も厭わず縫っていく。当時はこうだったのだろう。医師と患者のとてつもない上下関係も、今昔を感じる。医師は横柄な口をきき、患者は只管謙る。昔はこうだったのだろう、今ではとても考えられない、笑ってしまいそうである。
貧しい者たちの医療に奮闘する赤ひげとその門下生医師たちだが、幕府からは常に予算を削られて、やりくりは四苦八苦。昔から「政府」というのは訳もなく予算を削ることを第一としているようだ。金持ちから高い医療費を分捕って養生所の維持費に充てる赤ひげはかっこよすぎる。