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熊澤さん

2019.06.08

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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(25)

2019年、官僚・元官僚が登場するニュースが後を絶たない。私なりに整理してみると、
❶飯塚幸三(87歳)・・・東大工学部応用物理学科卒。元通商産業省工業技術院長(「飯塚元院長」と報道されて「元医者」と勘違いする人がいたが、中央官庁には、会計検査院など「院」という組織がいくつかある)。4月19日、東池袋自動車暴走死傷事故。母娘2人死亡。(高齢者による交通事故については後日ブログします)
❷西田哲也(28歳)・・・東大工学部システム創成学科卒。経済産業省製造産業局自動車課課長補佐。4月27日、麻薬特例法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕。
❸丸山穂高(35歳)・・・東大経済学部卒。元経済産業省係長。同省入省後わずか3年で退官し、その3年後に弱冠28歳で初当選、衆議院議員となる。5月、北方四島交流事業中、国後島訪問時の「戦争」発言等の御乱行の数々・・・。代議士辞めたくないらしい。

 と、ここまでくると旧通産省→経済産業省のキャリア軍団が「大活躍」で独壇場?(笑)といった印象だが、他省庁も黙ってはいない。
❹福沢光祐(44歳)・・・学歴は? 文部科学省初等中等教育局参事官補佐。5月28日、覚醒剤取締法違反(所持)及び大麻取締法違反(同)の疑いで現行犯逮捕。
2001年入省だから19年目で参事官補佐?ホントにキャリアかしらと思う。私は入省8年目くらいの31歳頃に参事官補佐(課長補佐クラス)になった。19年目はふつう、課長・参事官くらいになっているはずだけどなぁ。学歴も不明だし、「キャリア官僚」という報道は正しいのだろうか。
❺熊澤英昭(76歳)・・・東大法学部卒。元農林水産省事務次官。6月4日、同居する44歳の長男を包丁で刺したと通報し殺人未遂容疑で逮捕(のちに殺人容疑)。
私の古巣・農水省は(官僚関連ニュースに)登場しないよなと思っていたら、遂に来た、極め付きだ。官僚組織の最上位・トップ=事務次官、そして「殺人」。
〔❶、❷は東大工学部の先輩・後輩だが、ともに技官。ただ、工業技術院長といえば、通産技官の最高峰。事務官優位の霞が関だが、通産省は、農水省同様技官を多く抱えるも技官は事務次官に決してなれない。技官が事務次官になれるチャンスがある省庁は旧建設省・現国土交通省など僅かである。❸、❺は私と同じキャリア事務官。❹は?〕
霞が関というのは、各省庁ともキャリア官僚の先輩後輩の結びつきが大きい。何しろ、最もエリートとされるキャリア事務官は、各省庁で年間何百人も採用される職員のうち、わずか十数人から二十人程度(2001年の省庁再編成で国土交通省や総務省などマンモス官庁が誕生しこれら大官庁は三十人以上らしい)しかいない。だから、省庁ごとに上級職事務官だけで名簿が作られ、一つのムラが形成される(私の名前は「農林水産省法経学士名簿」に載っていて、退官後も民主党政権前まで同省秘書課(人事課のこと)から毎年送ってくれていた)。
十年以上も先輩の熊澤さんに直接仕えたことはないが、同じ事務官の先輩なので知ってはいたし、国際派という噂は聞いていた。私が農水官僚だった1980年代の職歴を調べてみると
1983年 - 農林水産省食品流通局企画課物価対策室室長
1984年 - 農林水産省経済局国際部国際企画課課長
1986年 - 農林水産省畜産局競馬監督課課長
1986年 - 農林水産省食品流通局砂糖類課課長
というポストだったようで、これでは私のいた森林、生糸、技術開発関係等の仕事と縁が薄く接触なかったなぁと納得した。
熊澤さんの同期の高木賢さんには、彼が繭糸(けんし)課長時代に係長として仕えた。高木賢さんも東大法学部卒でしかも司法試験合格者という「切れ者」だったが、食糧庁(当時)長官という農林水産事務次官に次ぐナンバー2のポストで退官し、弁護士になった。このほか、熊澤さんが事務次官になる前の農林水産審議官時代に支えた当時の事務次官・高木勇樹さんは彼らの1年先輩(やはり東大法)だが、長期在任(2年半←ふつう1年~1年半で交代するので異例。「大物次官」という話もある)だった。この高木勇樹さんは、私が、入省直後、役人振り出しの林野庁林政部林政課係員時代の上司で林政課総括課長補佐だった。当時から能吏と言われ未来の次官候補とされていたが、そのとおり18年後事務次官に駆け上った。確かに仕事が早かった印象で、無駄な残業はせずに、自分の仕事が済むと「お先に」と(飲みに?)退庁されていた記憶がある。先日、TVで熊澤さんの前任事務次官としてインタビューを受ける姿を見た。熊澤さんを優秀な官僚と褒めていたが、何十年ぶりに見るお顔はさすがに時の流れを感じるものであった(失礼!)。