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・・・・・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のテレビ論(7)
〔クイズ番組は楽しい〕
昔からテレビのクイズ番組は好きなほうで、といっても、お笑いなど芸能人が答えるクイズバラエティー番組でなく、「パネルクイズアタック25」のような素人・一般人が回答者の、正統派のクイズ番組が好きだ。昔は多数あった一般人出演のクイズ番組はこの「アタック25」だけくらいになってしまった。おそらく芸能人が回答者のほうが視聴率を取れるからであろう。
〔タレント化する東大生―「頭脳王」「東大王」〕
さて、最近、やたら現役の東大生がテレビに、特にクイズ番組(ややバラエティー)に出るようになった。7年前からほぼ毎年放映されている「頭脳王」で、亀谷航平君2連覇、水上颯君2連覇、そして今年2月、河野玄斗君(3人とも東大医学部)が優勝。「頭脳王」は、美術や音楽も含む極めて幅広い知識問題だけでなく、高難度の計算など科学的な理数問題も多数出題されるため、まさに「最強の頭脳 日本一決定戦!」というに値する。昔よくあった、知識量だけを争うクイズ番組で活躍していた早稲田などの文系学生の姿はとんと見なくなってしまった。
3年程前、当時東大理Ⅲ1年生で彗星の如く現れて3代目「頭脳王」チャンピオンになった水上君は、この1年は「東大王」ですっかり有名「タレント」になったようだ。ただ、「東大王」では理数問題がないこともあり、水上君ら東大王チームは芸能人チーム相手に苦戦することがたびたびあるのがご愛敬だ。確かに、一般視聴者に難しい理数問題は敬遠されるし、気軽に短答できる知識問題のほうが視聴率を稼げるに違いない。
〔神の頭脳か、河野玄斗現る〕
それにしても、2月2日放映の「頭脳王」の河野君はすごかった。水上君も天才と思っていたが、河野君はもっと上かもしれない。しかも、二人は同級生である。私の「大後輩」だ。私が東大医学部在学中、確かに天才的な頭脳の同級生(灘高とか開成高とかでトップ)は何人もいた。しかし、河野君や水上君みたいな人はいたのかなぁ。当時はこのような現役学生が出演するテレビ番組がなかったから、単に目立たなかっただけかもしれないが・・・。
〔東大医学部・京大医学部卒業生でノーベル賞なし〕
つい最近(2月23日)だが、大数学者岡潔とその妻みちを描いたテレビドラマ「天才を育てた女房―世界が認めた数学者と妻の愛」(日本テレビ)を観た。佐々木蔵之介と天海祐希が好演していた。とてもよかった。つくづく、「天才」というのは、やはりこのような奇人・変人なのだろうと感じた。あの「神脳(かみのう)」と称された河野君や水上君ら東大医学部グループ、そして「頭脳王」決勝戦で毎回東大医学部と争っている京大医学部(2016年は京大の井上良君が水上君を破った)グループ、この2学部が日本の大学入試で最難関であることは明白。ということは、この2学部は、百年以上もある歴史において、河野君や水上君や井上君のような天才を何人も輩出しているはずだ。ところが、卒業生でノーベル賞受賞者は皆無だ。自然科学部門(物理学、化学、生理学・医学)のノーベル賞受賞者は、東大も京大も理学部卒・工学部卒(2016年生理学・医学賞の大隅良典先生は東大教養学部基礎科学科卒)ばかりで、医学部卒はいない。あのiPS細胞の京大・山中伸弥先生の出身校は神戸大学医学部だ。
つまり「勉強ができる」「頭がよい」「物知りだ」「記憶力がよい」「計算が速い」など備わっていても、ノーベル賞のような、奇抜なアイデアを必要とする研究や発見は難しいということなのだろう。数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞をとった日本人受賞者3人、小平邦彦、広中平祐、森重文の各先生は、岡潔の研究成果の恩恵を受けている。岡潔自身は年齢制限(フィールズ賞は40歳以下)で同賞を受賞していないが、その業績は「世界一」と称賛されている。