・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のテレビ論(5)
最近気になるというか印象に残る人物は、あの金正男、アイシャ、フォンらでもない。あるいは、籠池、鴻池の森友「イケイケ」コンビ(対立関係だが)でもない。まぁ、「あの時君は若かった」「バン!バン!バン!」などの名曲をつくったかまやつひろしが亡くなったのは残念極まりないが。かまやつひろしの享年・78歳より8歳も年上で「現役」で大道芸人をしている、86歳のギリヤーク尼ヶ崎のことを初めて知った。
先月、夜遅く、なんとなくテレビのチャンネルを回しているとき、NHK教育で、この強烈な風貌のギリヤーク尼ヶ崎を密着取材した番組(ETV特集)を見つけて見入ってしまったのである。パーキンソン病による特有の手の動きが激しいだけでなく、身体も動きが不自由でどう見ても「要介護」状態だ。それが、大道芸の公演を予定していると。
翌日ネットで結構有名人であることを知った。彼の生活は、団地らしい安そうなアパートに「はるさん」という弟(86歳の人の弟だからやはり高齢だろうが身体は元気)との二人暮らしで、「はるさん」が食事等のお世話をしているようだ。二人とも独身なのだろう。番組は、ドキュメンタリーで生々しい彼らの質素な日常生活を紹介していた。前年くらいから病状がかなり悪化していて、こんなのでパフォーマンスできるのかなぁという状態だ。若いときの海外(!)公演の様子ではかなり激しい動きが彼の特徴のようだが。ところがである。薬剤が著効したらしく、予定公演の前には症状は著しく改善し、無事新宿での公演は多くの聴衆の前で完遂できたのだ。この新宿公演は、38年間続けてきているというから驚きだ。
86歳という高齢でパーキンソン病という難病を患いながら、代表作「念仏じょんがら」を見事に「踊って」みせたのである。拍手ものだ。結婚もせず、家庭というものを持たず、生活は決して裕福ではなく、だが自分が最もやりたい大道芸を何十年も続けて来られたギリヤークは幸せだと思うし、また、彼に対し敬意を表する次第である。
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伝説の大道芸人・ギリヤーク尼ヶ崎
2017.03.04