・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のTVドラマ論(12)
3か月ごとに入れ替わるテレビドラマは、おおむねおもしろい。毎週観てしまうことが多い。毎回1時間弱の貴重な時間が奪われることを考え、なるべく観る番組は絞る必要がある。
さて、今期(1月~3月)のドラマだが、やはり医療ドラマが気になる。というわけで、SMAP解散で注目度の高いキムタク主演の「A LIFE~愛しき人~」第1話を観てみた。キムタク自身が「とてもリアル」と宣伝しているらしいので、少し期待して。1度めの手術が(不測の事態とはいえ)失敗するなど、途中まではよかった。う~ん、なかなかやるな、「失敗しない『ドクターX』と違ってリアルだな」と思っていたら、終盤のシーンであきれてしまった。
脳外科医である医師(浅野忠信)が脳腫瘍の妻(竹内結子)の手術を、友人でもある心臓外科医のキムタクに「この手術はお前しかできない」と嘆願するシーンだ。「は~?」脳腫瘍の専門は脳外科医でしょ。患者が妻である手術は困難と思うなら、大学時代の知り合いで腕のいい脳外科医に頼むのが常識的なはず。失望したので次回からは観ないこととした。「ドクターX」のように、ヒマさえあれば麻雀しでも手術は完璧というのとは違って、いつも手術の吻合(ふんごう)の練習をしているキムタク医師はリアルだなと感じていたのになぁ・・・。非現実的さが、脳外科も心臓外科も消化器外科も整形外科も何でもかんでもやってしまう「ドクターX」に近づいてしまった。せっかく、キムタク、竹内結子、松山ケンイチ、木村文乃、柄本明、及川光博、浅野忠信といった豪華出演陣なのだが・・・。まぁ、非現実的な「ドクターX」があんなにも高視聴率を叩き出すのだから、このドラマも高視聴率になるかもしれない。
(医療監修があの天皇陛下の心臓手術で有名になった順天堂大学の天野先生と出ていた。天野先生が「心臓外科医が脳の手術する」なんて言うはずないし、番組制作側に押し切られた?)
非現実的といえば、中卒の親が娘の中学受験に奮闘する「下克上家族」(阿部サダヲ主演)も今期のドラマだ。こちらは実話に基づいているらしいので、まだリアルと考えていいのだろう。