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「コウノドリ」は秀作医療ドラマだ

2016.01.03

・・・・・・・・・・・・・・・・河辺啓二のTVドラマ論(10)

2015年10月~12月の夜のTVドラマは、おもしろい医療ドラマ&医者主人公ドラマが目白押しだった。これまでこんなにも「テレビっ子」になったことがあっただろうかと思うほど毎日のようにテレビを見てしまった(反省)
火曜日 NHK「わたしをみつけて」・・・珍しく准看護師が主人公
水曜日 フジ「無痛」・・・患者の外観を見ただけで診断できる医師が主人公
木曜日 朝日「遺産争族」・・・葬儀屋に婿入りする研修医が主人公
(金曜日 テレ東「釣りバカ」・・・医療無関係だがついつい見てしまった)
金曜日 TBS「コウノドリ」・・・珍しく産科医が主人公
土曜日 NHK「破裂」・・・心臓外科医と官僚が主人公という珍しい組み合わせ
日曜日 TBS「下町ロケット」・・・後半は「ガウディ計画」で半分医療ドラマに

このほかにも産婦人科が舞台の「デザイナーベイビー」(火曜日NHK)もあった。これは、私が医学生のとき産婦人科学の講義をしてくれた岡井崇先生の書いた小説が原作だったにもかかわらず観ずに終わった(ほかのドラマで忙しかった)。おもしろそうなテーマだったが・・・、岡井先生、すみません。
視聴率ダントツの「下町ロケット」は確かにおもしろかったが、最も心を打ったのは、綾野剛主演の「コウノドリ」だ。こんなに心に響いたTVドラマは、何年か前の「風のガーデン」(2008年フジテレビ 緒形拳の遺作)以来である。

「赤ちゃんはフツーに生まれるのが当たり前」と考えがちな「お産シロウト」の視聴者にぜひ観てもらいたい名作だった。「赤ちゃんが生まれるのは奇跡なんです」というメッセージがよく伝わっていた。よくあるスーパー天才外科医が難手術を次々と成功させ、いつもハッピーエンドに終わる医療モノと違い、不幸にして赤ちゃん又は母体が助からなかったり、あるいは赤ちゃんの命が助かっても障害が残ったりするなど、極めて現実的な結末も頻繁に登場する、とてもリアリティーに富んだ医療ドラマだ。
リアリティーといえば、一部模型もあったようだが、多くは本物の赤ちゃん(協力病院のおかげ)が「出演」して、極めて実際に近いお産シーン、手術シーンを見せてくれた。医学生のときの学生実習のときから、お産は感動的だと感じていた私にとって、これらシーンはどれも胸打つものであった。
また、こんな優しい産科医がいたらいいなと日本中の妊婦さんたちを思わせたに違いない綾野剛(原作とソックリ)の名演技が光っていた。そして、冷徹で優秀な同僚産科医、ちょっと頼りない産科研修医、パワフルな助産師、ソフトな新生児科医、荒っぽいが頼もしい救急医、お笑い芸人演ずる麻酔科医、飄々とした院長など、多くの個性的な脇役たちもとてもよかった。
「コウノドリ」にすっかりハマッた私は、書店で原作の漫画単行本12巻を購入し読破。登場人物もストーリーもほとんど原作に忠実であることがわかった。テレビで「再現」した後の話(下屋研修医が救急に転科するなど)もあるようなので、ぜひ「コウノドリパートⅡ」の放映を望むものである。
(唯一、非現実的だと思えたのは、あんな超多忙な産婦人科医の仕事をしながらピアニストの仕事もこなすということか。まぁ、「天才ピアニスト」だからいいのかな。)