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・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の音楽論(12)
昨年の、あの悪夢のようなポール急病で公演中止から1年、ポールがリベンジに来てくれた。今年6月に御年73ということを思うと、今回こそ最後の来日コンサートかなぁと、厳しいチケット争奪戦を経てナマPAULを見に行った。
全盛期の20歳代、30歳代と同じ高音発声というのは難しく、ややかすれ声のときもあるものの、有名になった、「水飲まずコンサート」を2時間40分・37曲を見事に完遂した。こんなに長時間、沢山のヒット曲を披露できるアーチストがほかにいるだろうか。
東京ドームでは、私たち中高年ばかりでなく、20歳くらいの若い観客も結構いたので驚いた。おそらく、私ら世代の親の影響を受けた若者たちだろう。日本武道館は、チケット高価格のためか観客の平均年齢はだいぶ上がっているように見えた(若者はそんなにカネがない)。
日本武道館公演の開演予定時間は6時30分であったが、野外の行列で長時間待たされ、スタートしたのはなんと7時55分。東京ドームでは30分くらいの遅れだったのに、1時間半も遅れた。私が今まで行ったコンサートで、最大の遅れは、何年前だったか忘れたが、ローリング・ストーンズの東京ドーム公演で約1時間だった。このとき、観客の誰も怒っていなかったが、今回も誰も怒っているように見えず、ファンというのは気長なものだとつくづく感じたものだ。(ふつう、人との待ち合わせで1時間半も待たされたら憤慨するはず)
さて、8時近くなって始まったポールの武道館公演。(ビートルズのときから49年ぶり、半世紀ぶりと、新聞、テレビのメディアが翌朝一斉に報道されることとなる)
どのくらいの時間、曲数をやってくれるのだろう。まさか1966年のときの30分、11曲なんてことはないようなぁ。あのときの曲を多数してくれるのかな。東京ドームのときと異なる曲を演奏するという噂だが・・・。
以下がセットリスト。
1.Can't Buy Me Love (The Beatles song)
東京ドームでも3曲目くらいに披露されたが、オープニングに持ってきた。翌日のテレビでもこのときの演奏が何度も放映された。
2.Save Us(ソロ・最新アルバム「NEW」より)
私としてはアルバム「NEW」の中では最もお気に入り。曲「NEW」よりいい。70歳もなってこんなノリのいい曲を作り歌えるPaulの才能に驚愕したものだ。
3.All My Loving (The Beatles song)
Johnをして「悔しいほどいい曲」と言わしめた曲。初期のPaul の「名曲メーカー」の始まりかな。私も、若い頃ヘタなギター弾き語りで唄っていたなぁ。
2、3は東京ドームでも序盤に演奏されていた。
4.One After 909 (The Beatles song)
遂に日本公演で初披露の曲が登場。ただ、ジョン・レノン主体の曲で、アルバム「Let It Be」収録曲。それ程の名曲でもないのだが初めて聞けると思いきや、この曲の演奏中、私の直前の客とその前の客がなぜか喧嘩を始めたので(係員が何人も来て沈静化させた)、集中して聞けなかった。みんな立ちっぱなしで身体を動かすので、ぶつかり合ったのかしら。いずれにしても10万円も払ったコンサートで喧嘩とは・・・。
5.Let Me Roll It (Wings song)
ヒット曲でもないのに、なぜかポールのお気に入りで昔からコンサートの「必須曲」。この曲が好きな客も多くはなさそう。ソロ時代の曲をやりたいのなら「My Love」とか「Silly Love Song」とか大ヒット曲が沢山あるはずなのに。
6.Paperback Writer (The Beatles song)
やっと1966年武道館の演奏曲登場。ただ、この曲は東京ドームでも毎回披露されている。
7.My Valentine(ソロ)
現夫人のナンシーに捧げる歌ということで必ずやる曲。「NEW」の次に新しい2012年のアルバム「KISSES ON THE BOTTOM」の曲。東京ドームでは巨大スクリーンで歌詞内容が「手話」表現されていた。
8.Nineteen Hundred and Eighty-Five「1985年」 (Wings song)
Out There Tourで一昨年も今回も演奏されている。ポールソロで最高傑作とされる「Band on the Run」(全英、全米ともに1位)のラストを飾る曲。同アルバム収録曲はたったの9曲なのに、ここ数年のコンサートではそのうちなんと5曲(この曲と「バンド・オン・ザ・ラン」、「ジェット」、「レット・ミー・ロール・イット」、「ミセス・ヴァンデビルト」)が演奏されている。個人的にはこの「1985年」よりMrs Vandebiltのほうが楽しくノリがいいので聞きたかったなぁ(他国でのコンサートでは披露されている)。
9.Maybe I'm Amazed「恋することのもどかしさ」(ソロ)
いつもは7から始まるピアノ曲連続4曲のはずが、なんと名曲中の名曲「The Long and Winding Road 」が飛ばされてしまった。イヤな予感。一昨年も今回も東京ドームで必ず演奏するこの素晴らしい曲をやらないなんて・・・。曲順を変えて後でやるのかなぁ。それとも東京ドームのときより短縮コンサートになってしまうのか(後者が当たり)。
この曲は最初の夫人リンダに捧げる曲で、ビートルズ解散後初のソロアルバム「Paul McCartney」に収められ、音楽専門家には「名曲」と言われているが、私にはそのよさがイマイチわからない。
10.I've Just Seen a Face (The Beatles song)
ビートルズ「HELP」のアルバムの中で後にビートルズの大代表曲となる「Yesterday」の直前にちょこんと収録されている小曲だが、やはりポールのお気に入りか、ウィングス時代からコンサートでよく演奏されているらしい。
11.Another Day(ソロ)
ビートルズ解散後初のシングル盤。中学3年頃から洋楽に目覚めた私は、殆ど同時にヒットしていたジョン の「MOTHER」とよく聞き比べていた。最初のうちは「マザー」に飛びついていたが、次第にこのメロディアスな「アナザーデイ」のほうが好きになっていた。
12.Dance Tonight (ソロ)
2曲目の日本初披露曲。比較的新しい曲で、2007年のソロアルバム「MEMORY ALMOST FULL」のトップに収録されてあり、いちおうシングルヒットしている。
13.We Can Work It Out 「恋を抱きしめよう」(The Beatles song)
いつもやってくれる曲でポールメイン。シングル盤両A面でこの曲とカップリングの「Day Tripper」(こちらはややジョンメインの印象)は、ドームでは毎回アンコールで演奏してくれたが、武道館ではやらず。1966年の演奏曲なのだが。
14.And I Love Her (The Beatles song)
まぁ、初期のビートルズ・ポールの美しきバラードの代表曲と言っていいだろう。映画「ハードデイズナイト」に中での演奏シーンが思い出される。
15.Blackbird (The Beatles song)
ヒット曲ではないが、最近のコンサートでの定番。一昨年は、作曲の動機となった「黒人の人権擁護問題」に言及してから歌い始めていたものだが、今回はそういう紹介は一切なかった。いつも同じ話で飽きちゃった?
16.New(ソロ・最新アルバム「NEW」より)
アルバム「NEW」の曲は、一昨年は4曲、今年の東京ドームは3曲(代わりに最新曲「Hope For The Future」)、そして曲数の少ない武道館では2曲となった。
17.Lady Madonna (The Beatles song)
ビートルズ時代中期頃から、ポールの曲にピアノ演奏が増えて行く。後に「ヘイ・ジュード」、「レット・イット・ビー」など大ヒットピアノ曲の先駆けとなるナンバーワンヒット曲がこれである。
18.Another Girl (The Beatles song)
「セカイハツコウカイ」とポールが日本語で紹介。「ん、いったい何だろう」と思っていたら、このほぼ無名の曲だった。アルバム「HELP」収録曲。たしかに世界初披露らしい。う~ん、どうせ初公開なら、もうちょっといい曲がいっぱいあるはず・・・。
19.Got to Get You into My Life (The Beatles song)
久しぶりの披露らしい。アース、ウィンド&ファイア(EWF)がカバーしてヒットしたので、知っている人は結構多いかも。
20.Being for the Benefit of Mr. Kite! (The Beatles song)
ビートルズ時代の曲なら、ほかにポールがリードボーカルの、「Michelle」とか「Penny Lane」とか有名曲が多数あるのに、なぜかジョンの、しかもさほど有名でない曲が演奏されている。「Eight Days A Week」も(「One After 909」も)そうだが。
21.Ob-La-Di, Ob-La-Da (The Beatles song)
世界的なヒット曲ではないが、日本ではホワイトアルバムからシングルカットされていて、テレビCMで使われるなど、日本人には馴染み深い曲だ。「イッショニウタオウヨ」とポールが日本語で誘い、「オブラディオブラダ・・・」と1万人の大合唱(東京ドームでは5万人)で会場は盛り上がっていく。
イントロが強烈なピアノ音だからピアノ伴奏で歌うのかと思いきや、ポールはベース演奏。ピアノの音はバンドメンバーが。そう言えば、レコーディングでは、ジョンがピアノを弾いて、ポールがなかなかOKを出さず、最後にジョンがヤケクソにピアノを叩いたテイクがOKとなったというエピソードが思い出された。
22.Back in the U.S.S.R. (The Beatles song)
連続で「ホワイトアルバム」の曲。同アルバムのトップの曲でまさにノリノリの曲で観客はヒートアップ。
23.Let It Be (The Beatles song)
ここで、「Yesterday」と双璧で日本人に愛される、ピアノの大名曲で観客の心を揺さぶる。
もうこのへんになると、あぁ、いつもの「The Long and Winding Road」ばかりか、「Band on the Run」も「Eleanor Rigby」も今日はやらないんだなと諦めがつく。
24.Live and Let Die (Wings song)
東京ドームでもどこでも、コンサートで「爆発」を伴う定番中の定番になった007の音楽だ。ドームならともかく、(それより)はるかに狭い武道館でいつもの「爆発」やるのかしらと思っていたら、いつものとおり、サビの「リヴァレットダイ・・・」のところで「バーン」で爆発、炎、煙が・・・。(きっと消防署の許可をもらっているはず)
25.Hey Jude (The Beatles song)
いよいよコンサート本編ラスト。いつもの大合唱。ポール自身、コンサートで演奏するに最も好きな曲だとか。実際2012年のロンドンオリンピック開会式で「ナナナ・・・」と大合唱となったのはまだ記憶に新しい。いつも、女性、男性と分けて合唱させる箇所があるが、今年は「ジョシ」「ダンシ」という日本語で分けさせたのが印象的だ。
Encore:
26.Yesterday (The Beatles song)
まぁ、この曲をしないでコンサート終了というわけにはいかないだろう。これで、1966年の演奏曲やっと2つめ。
27.Birthday (The Beatles song)
日本公演本編では初披露。「ホワイトアルバム」の2枚目アタマを飾るノリノリの曲だ。いつも最後のアビーロードB面最後メドレーの直前は「Helter Skelter」だったので、目新しい感あり。
最近のポールのコンサートでは、既述のとおりソロ時代ではアルバム「Band on the Run」の曲が目立つが、ビートルズ時代のアルバムからは「ホワイトアルバム」が目立つ。「バック・イン・ザ・USSR」「オブラディ・オブラダ」「ブラックバード」「ヘルタースケルター」とこの「バースデイ」と5曲もある。
28.Golden Slumbers (The Beatles song)
~Carry That Weight (The Beatles song)
~The End(The Beatles song)
いつもは2回あるアンコールは1回で終わった。
結局、一昨年も、今年のドームもブドーカンも、最後はこのメドレーで締めくくった。
1966年日本公演のシメの曲「アイム・ダウン」(個人的には大好きな曲)披露をちょっぴり期待したのだがなぁ・・・。
東京ドームの5.5倍の高価格チケットで、演奏曲数も演奏時間(7:55~9:55のちょうど2時間)も4分の3という日本武道館コンサートだった。いわゆる「場所代」「話題性」なのだろう・・・。
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〔参考1〕
2015年ドーム基本セットリストにあって武道館では演奏されなかった曲:
Magical Mystery Tour、Jet、The Long and Winding Road、Hope For The Future、Here Today、Queenie Eye、All Together Now、Lovely Rita、Something、
Band on the Run、Eleanor Rigby、Day Tripper、Hi, Hi, Hi、I Saw Her Standing There、Helter Skelter
〔参考2〕
1966年 日本公演で演奏された曲一覧
1.Rock And Roll Music
2.She's A Woman
3.If I Needed Someone「恋をするなら」
4.Day Tripper
5.Baby's In Black
6.I Feel Fine
7.Yesterday
8.I Wanna Be Your Man「彼氏になりたい」
9.Nowhere Man「ひとりぼっちのあいつ」
10.Paperback Writer
11.I'm Down
〔参考3〕
<2015年ドーム4公演セットリストまとめ>
Magical Mystery Tour ※4/25はEight Days a Week
Save Us
Can't Buy Me Love ※4/25はAll My Loving
Jet ※4/27はListen to What the Man Said
Let Me Roll It
Paperback Writer
My Valentine
Nineteen Hundred and Eighty-Five
The Long and Winding Road
Maybe I'm Amazed
I've Just Seen a Face
We Can Work It Out
Another Day
Hope For The Future
And I Love Her
Blackbird
Here Today
New
Queenie Eye
Lady Madonna
All Together Now
Lovely Rita
Eleanor Rigby
Being for the Benefit of Mr. Kite!
Something
Ob-La-Di, Ob-La-Da
Band on the Run
Back in the U.S.S.R.
Let It Be
Live and Let Die
Hey Jude
Day Tripper
Hi, Hi, Hi
I Saw Her Standing There ※4/25はCan't Buy Me Love
Yesterday
Helter Skelter
Golden Slumbers / Carry That Weight / The End
※2013年ツアーで演奏して今回演奏しなかった曲:
Things We Said Today、Everybody Out There、Get Back