・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(23)
先日の安倍首相の靖国神社参拝に中国・韓国が反発するのは全く「予定どおり」だったが、これまで靖国に関し中立的だったアメリカが「失望した」と批判したことに「想定外」と政府は当惑している。このことを聞いて、かつて日本が「エコノミックアニマル」と揶揄されたことがあるが、アメリカこそ「エコノミックアニマル」ではないかと感じた。
アメリカで毎年交通事故より多く死者を出している銃に関する規制は、十年ほど前の日本人留学生射殺事件、更には頻発する銃乱射事件等で少しは強化されたかと思いきや、全米ライフル協会の政治的圧力に屈し、全くと言っていいほど進んではいない。銃消費による経済の力に、生命の安全という正義、そして政治が平伏しているということだ。
今回の安倍首相靖国参拝に対するアメリカの姿勢も同様だ。巨大な市場を抱える中国の機嫌を損なうと売り手のアメリカ経済に支障が生じることを恐れているからにほかならない。要するに、「経済が第一」で、正義は二の次なのだ。
誰が考えてもおかしい。アメリカは第二次大戦中、青息吐息の日本に対し、原爆という、後世まで永く影響のある、最も使用してはならない兵器を使用してしまった。お人好しの日本人は、核爆弾の恐ろしさは訴えても、アメリカを非難する声はほとんど聞かない。非道さにおいて原爆投下より軽い日本に対し、七十年近く経っても批判の鉾先を収めようとしない中韓とは大きく異なる。このことを踏まえながらも、中国に配慮して日本批判をするアメリカこそ「エコノミックアニマル」だ。自由と正義の国を自負しておきながら「経済優先」、失望されるべきはアメリカではないか。