・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の教育論(9)
東京大学が、2016年度から2次試験の一部で筆記テストを廃止し、推薦入試の導入することを決定したらしい。後期日程入試の定員100人を振り分ける方針だという。しかも、その後の経過によっては前期日程への拡大もあり得るという。
筆記テストだけでなく推薦入試で多様で優秀な学生を確保したいというのは、ここ数十年の大学入試の趨勢となっており、私立大学のみならず国立大学でも増えてきている。しかし、これまで東大などごく一部の難関と言われる大学は、推薦入試を行わない姿勢を貫いてきた。
私は、2回東大を卒業している。地方の無名高校の卒業生であり、学力だけの一発勝負の入学試験は厳しくもあったが、努力すれば報いてくれそうな東大入試(「良問」が多い)は嫌いではなかった。特に、30歳過ぎての医学部(理Ⅲ)再受験の際にも、高校の調査書や年齢に全く無関係で学力だけで受かることができた。
このような極めて公正な現行の大学入試を(大学院入試ならともかく)改変する必要があるのだろうか。推薦入試となれば、千差万別の各高校の調査書の公平性、信憑性は担保できるのか。面接で、話上手で機転のきく人が、優れた頭脳で話下手な人より高い評価になってしまうのではないか。
浜田学長は「1点刻みで合格、不合格を決めていていいのか」と話しているそうだが、スポーツをはじめ多くの世界で僅差での勝者、敗者は存在するわけだし、学長の考えには賛同できない。昨年の天皇陛下の心臓手術では、変なプライドを捨てて非東大の名医を起用したことには拍手を送ったが、今回のことには賛成できない。