2012.06.02
・・・・・・河辺啓二の社会論(11)
人気芸人の家族の生活保護費受給問題を見るに、実はもっと不適切・不可解な実態があることを認識すべきである。
以前軽症疾患で私の診療所によく通院していた中年男性の生保受給者は、元気に自転車で乗り回していた。私は、どうして働けないのかしらと訝しがり、福祉事務所には「働けるのではないですか」と何度も通告した。やっと生保受給停止になったのは何年も経ってからであった。
また、逆に、身寄りもなく資産もなく、身体もよく動かない80歳代後半の独居女性の生保受給者は、ある日、役所の担当者から訪問時「あなたのような人がいるから無駄な税金がかかるんだ」と暴言を吐かれ、「生きているのが申し訳ない」と泣いていた。
両極端ともいえるこの二人の生保受給状況をみるに、面倒そうないやな相手には尻込みし、おとなしくて弱い相手には高飛車に対応する公務員の姿である。そしていったん決まった受給を変更するのは煩雑だから、ついだらだらと支給し続けるお役所体質だ(基本的に、役人は変革・変化を厭う)。
もちろん、一般の生活保護担当官に、税務担当官や警察のような強制的な捜査権限がなく、申請者の言葉を鵜呑みにするしかできないことやケースワーカーの絶対的不足が生活保護不正受給の主因なのだろう。しかし、行政現場の公務員も、その業務の重さ、崇高さに誇りを持って、適切な運用が行われるように努力してほしいと思う。