2012.05.06
・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(18)
人事院の発表によると、キャリアと呼ばれた国家公務員Ⅰ種の採用試験を廃止して新たに導入される「総合職」試験(大学院・大学卒業程度)の申込者数が前年度のⅠ種試験に比べ13%以上も減ったらしい。政府が来年度の国家公務員の新規採用数や給与を削減することが影響していることは明らかだが、これまで、キャリア官僚=「新幹線」と呼ばれた昇進慣例がなくなることも一因だろう。
岡田副総理は「公のために志を持った人はひるまないでほしい」という趣旨を語っているが、理想論だけではたして優秀な人材が多数確保できるだろうか。
かつては「官僚になれば、将来○○に幹部で天下りできる」という不純な動機で役所に入る者もいた。しかし、当初の志がこのようなものであった者でも、行政組織の中では有能な官僚として働き、結果的には国家に貢献できた者も多数いることも事実である。もちろん、天下りも高い退職金も不要とし国家のために滅私奉公する気概のある若者が行政組織に入って来ることが望ましいのは当然だが、そういう人ならば能吏の資質を有していると考えるのは誤りである。(能吏の資質とは的確で迅速な事務処理能力なのである)役人としての志の美しさと官吏としての有能さとは相関関係にないのだ。
もし官僚になっていれば能吏になっていたかもしれない人材が何人も民間企業に流れていく可能性があることを政府も岡田副総理も斟酌したのだろうか。