・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(14)
政府が開いた国家戦略会議で、民間議員から医薬品産業の競争力を高める「創薬支援機構」の設置などを求める提言書を出され、議長の野田首相は、前向きな姿勢を見せたという。
我が国のように、国土も天然資源も乏しい国が、戦後の焦土を乗り越え先進国の地位を確立維持してきたのは、国民の努力や勤勉性にあることは否定できない。特に、日本経済の牽引役として、(造船業から始まり、)自動車、電機、そしてIT産業など、科学技術を根本とする製造業が大いに寄与してきた。しかし、これら日本の「お家芸」が韓国や中国などの進展によりもはや青息吐息状態だ。現在、経済産業省が「クールジャパン」など文化産業育成に活路を見出してはいるが、やはり経済・産業の基本は「ものつくり」だろう。
医療水準も高く、優秀な医学研究者も多数いる日本が、大きな土地も資源も必要としない、最たる頭脳集約型産業である医薬品産業で国際競争力を持つことは日本経済に大きく資するものと考える。
政府は、高騰する医療費を削減することばかりに注目し、安価な後発医薬品へのシフト政策を行って来た。このため、先発医薬品メーカーの利益が減少し、本来利益から費用が割り当てられる新薬開発事業が低調となっている。創薬―新薬開発には莫大な費用がかかるのだ。今後、「創薬支援機構」がこれら製薬会社の創薬に大いなるインセンティブを与えることを期待する。
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上記の投稿文を朝日新聞「声」に送ったところ、採用となり、若干手直しされ、3月9日に掲載された。同「声」には2月19日に掲載されたばかりなので、中16日で2か月連続採用となった。わずか550字程度の短文とはいえ、私の考えや意見が有力全国紙に載せていただくのは、やはり嬉しいものだ。