・・・・・・・・河辺啓二の医療論(12)
抗インフルエンザ薬は、従来型の経口薬、吸入薬に加え、単回吸入の薬剤、そして点滴薬もあり、近い将来には発症後ある程度経過しても効果のある薬剤も登場する見通しだ。迅速検査キットも、今シーズンは、A型・B型インフルエンザに加えてH1N1(新型インフルエンザ)も検出できるようになった。年々インフルエンザ診療が容易になっているように思われる。
しかし、現在のように、連日多数のインフルエンザの患者さんを診ていると、迅速検査キットの鋭敏さが何年も前からほとんど改善していないことに少々苛立ちを覚えている。昨日発症した患者さんは陽性が出やすいのに対し、発熱後間もない患者さんは陽性が出にくい。ある一定量までウイルス量が高まらないとキャッチできないのだ。
それでいて、現在使われている抗ウイルス薬は、発症後2日くらいまでに投与しないと効果が低いとされる。つまり、検査は「もう少し待たないと確定診断できない」、治療は「発症後速やかに投与しないと効果薄」という状態がもう何年も続いている。
昔は「高熱・頭痛・体痛」がそろえばインフルエンザと診断し得たが、近年のインフルエンザは、37度程度の発熱であることも多く、症状も風邪に似て多様化しており、検査なしで診断確定することは困難になってきている。このため、発症直後~数時間しか経ていなくても少量のウイルスを検出できる簡易な検査キットが早く開発実用化できることを切に望むものである。