・・・・・・・・河辺啓二の教育論(5)
〈東大が投じた一石〉
東大の「秋入学」が波紋を呼んでいる。有名主要大学が同調する動きを見せ、政府も前向きな姿勢を見せている。
東大に学生として2度も在籍した私だが、もし東大の言うように5年後実現したとしても、自分の子らが大学生になる頃より後のことになりそうなだけにやや関心が薄い(というか自分の子らにこれら有名大学に入れる学力はなさそうだが)。
〈実現までに問題は山積〉
今、いろんな分野の人々の間で議論になっているが、一部の有力大学だけが秋入学になるのは、チト無理がある。国家試験や就職など卒業時期と関連する多くの「区切り」事項との調整が困難を極めるのは必至だ。日本社会全体が「秋」スタートになる必要があるかもしれない。
そもそも、明治の昔は、大学は秋入学だったらしい。それが小中学校と歩調を合わせて春入学となった。「桜の時季に入学式」という日本の定番(風物詩)が確立された。官庁の会計年度が4月1日開始であることが、各種学校の4月入学・始業にリンクしているに違いない。
〈5年で実現できるか?〉
今回の東大の「国際化に向けた」一石は、確かに意義はある。国民的議論を経ていつかは実現しなければならないだろう。しかし、5年というのはやや急ぎ過ぎの感がある。10年くらいは掛けて、議論を深化させ、種々の制度・慣行の改変を(段階的にでも)して行くことが適当ではないだろうか。
大学合格後入学までの半年間のギャップタームはどうなるのだろう。果たして全ての「入学予定者」が有意義に過ごせるのだろうか。私のような年取った再入学者の場合、生活費稼ぎに追われるはずで、そんなのでも大学は可とするのだろうか。