・・・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(14)
脱原発か否か、TPP参加か否か、このところ国内を二分する議論が盛んだ。いずれの対立構造に根深く存在するのは、経済を最優先するかどうかということだ。
原発再稼働をせず、更に原発輸出の動きも鈍くなれば、日本経済の成長は困難になるだろうし、国民生活の快適度は後退するだろう。TPPに参加しなければ、輸出に依存度の高い我が国の製造業は苦境に立たされ、経済が冷え込む可能性は大きい。
しかし、私たち国民が最も必要とするものは、果たして経済成長なのだろうか。たとえ経済が停滞し、節電を強いられて不便な生活になっても、放射能汚染のない環境下で、安心して汚染されていないものを飲んだり食べたりする生活をしたいのではないか。
TPP参加となれば、アメリカの市場原理主義が我が国の農業や医療などを席巻する可能性が否定できない。食料安全保障や環境保全といった公益的機能をもつ農業や国民の生命・健康に直接関わる医療に市場原理は馴染まない。先進国の中で恥ずかしいくらいの低い食料自給率を更に減らし、その上遺伝子組換え作物かもしれない輸入食物に依存するような生活になってもよいのだろうか。アメリカのように貧富によって医療の差が生じることとなってよいのだろうか。
最近、昭和時代を背景にしたテレビドラマが人気だ。国民の中には、現在のような快適・便利ばかり追求する、物質的にだけ豊かな生活から決別してもよいと思っている人も多いのではないか。―――――――――――――――――――――
上記の内容を11月9日(水)夜に朝日新聞「声」に投稿したところ、11日(金)に同紙担当者から連絡が来ました。若干の手直しを受け、16日(水)、同欄に掲載されました。
半年ぶりの朝日新聞掲載でした。