・・・・・・・・・・・・・東日本大震災(12)
毎年、夏の時期になると、いわゆる「冷房病」の患者さんが多数来院します。特に女性勤労者に多い。オフィスではスーツ・ネクタイ着用の男性社員を基準に、エアコンがかなり低い温度に設定されているため、スカート着用の女性職員にとってはやや肌寒い環境となっています。このため、体温調節をつかさどる自律神経の失調から体調不良を来たし、身体の冷えや疲労感等、あるいは風邪のような症状を呈する「冷房病」発症となるのです。過度の冷房、長時間の冷房は、私たち人間の体温調節機能を著しく低下させているわけです。
しかし、今夏は、様変わりです。そのような患者さんはほとんど見られなくなりました。
考えてみれば、私たち日本人はなんてバカなことをしてきたものでしょう。過度の冷房で無駄なエネルギーを消費し、多くの人たちの健康を害し、医療費を増大させ、体調不良で仕事を休んだぶんの経済的損失までをも生じさせてきたわけですから。
今回の東日本大震災は、私たちに無数の甚大な「負」の影響を与えてきましたが、原発事故に起因する節電マインドの向上は、上記のようなエネルギー浪費を改めさせるのみならず、「冷房病」を激減させ、医療コスト等経済的浪費を減らしているように思えます。震災による数少ない「正」の影響ではないでしょうか。もちろん、過度の節電で熱中症にならないように留意することが重要ですが。
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上記の内容を8月4日(木)夜に読売新聞「気流」にメール投稿したところ、翌5日(金)昼に電話連絡で原稿修正の確認があり、6日(土)付け同欄に掲載されました。メールしてから掲載までなんと1日強というスピード掲載でした。