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〈ワクチン後進国・日本〉子宮頸がんワクチンの国家検定期間の短縮を

2011.04.27

・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(10)


〈不足する子宮頸がんワクチン〉

子宮頸(けい)がんを予防するワクチンの供給が全国規模で不足している。国の2010年度補正予算に盛り込まれた子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金制度を受けた措置により、ワクチン接種全額公費負担が、各地方自治体で次々と行われることとなり、需要が急増し、製造が追いつかなくなったためだ。同ワクチンは、昨年11月から来年度まで、中学1年~高校1年の女子を対象に、接種費用の約5万円を公費で全額負担することが決定している。
 
子宮頸がんは、日本では年間約8500人が罹患し、約2500人が死亡する女性特有のがんである。子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス)は、発がん性HPV(ヒトパピローマウイルス)の中でも特に子宮頸がんの原因として最も多く報告されているHPV 16型とHPV 18型のウイルスに対する抗体をつくらせるワクチンであり、中1~高1でワクチン接種すれば、50~70%の確率で予防できるとされている。海外では既に100か国以上で使用されていたが、日本では、やっと2009年10月に承認され、同年12月から一般の医療機関で接種することができるようになった。しかし、高額の自己負担ということもあり、これまでは接種率は低かった。

厚生労働省は、安定供給が行われるまでは、新規の接種を控えるよう全国の自治体や医療機関に求める通知を出した。製造元のグラクソ・スミスクライン(GSK)によると、需要の大幅な増加が見込まれたため、前年の4倍以上となる400万回分を今年1年間で製造する計画を立てたが、今年1、2月だけで100万回分近い需要があり、製造が追いつかなくなったという。GSKは「1、2月に予想を超える需要が生じた。供給不足はわれわれの責任で大変申し訳ない」と謝罪している。安定供給は7月末から8月ごろになる見通しだという。


〈又しても拙劣なワクチン政策〉

このワクチンは、初回接種から1か月・5か月の間隔で計3回接種しなければならない。今回の供給不足で、接種計画が大幅に変更せざるを得なくなり、この標準間隔で接種できない人が多数出てくるおそれが生じている。

子宮頸がん発生率を減らすワクチンとして官民挙げて推奨・喧伝したのはよいが、受けたくても受けられない人が急増した。このような事態となったのは、ひとりGSKの責任ではなく、公費になれば需要急増は確実であるのに、供給体制が整う時期をにらんで公費負担時期を決められなかった国に責任はないのか。また、国は、輸入される同ワクチンの計画的増産をメーカーに依頼できなかったのか。

現段階では生産は十分確保されているのに、輸入されて私たち医療機関に届くまでまだ何か月もかかるのは、途中に各種審査を経なければならないためだという。その過程で最も期間が長いものは、80日間もかかる「国家検定」だ。検定項目がはるかに多いメーカーの「自家検定」のほうが30日間だというのにあまりにバランスが悪い。「民」は急いで働け、「官」はじっくりとやるからと言わんばかりではないか。「国家検定」も「自家検定」並みに短くすれば1か月以上早く接種することが可能となる。需要予測が読めなかった厚生労働省は、接種対象者や医療機関を混乱させたことを反省し、従来のようなのんびりした仕事ぶりは改めてほしい。

「想定外」の言い訳を連発した今回の福島原発事故ほど深刻ではない問題ではあるが、改めて政府の認識の甘さを感じるものである。