・・・・・・・・・・・・・東日本大震災(1)
3月11日以来、私たちの生活は「非日常」となってしまいました。まさに未曾有で、太平洋戦争を知らない私たちにとっては人生最大の事件で、生活ばかりか人生観までをも変えてしまいました。
当日、私は午前中の診療の後、急いで昼食をとり、地元の保健センターにポリオの集団接種に出かけました。年に何回か、このような集団予防接種や幼児健診等の仕事をすることが医師会の中で割り当てられているのです。
他の2人の医師とすべての接種を終え、一服の後、午後3時からの診療のため、クリニックに戻って間もない時でした。かつて経験した記憶のないような大きな揺れが襲って来ました。真っ直ぐに立っているのが困難なくらいでした。午後2時46分でした。
生まれ育った四国でも、また四半世紀住んだ東京でも、地震は何度も経験しており、少々の地震では「またか」くらいにしか思わないようになっていました。でも、今回はさすがに驚きました。当地の震度は6弱でした。12年住んで「(大きな)地震のない群馬」と思っていたのですが。群馬で生き続けておられる80歳代の患者さんもこんなの初めてと言っていました。当地の揺れは、「未曾有」クラスだったと思いますが、私の周辺も含め、群馬県内では大した被害は起きませんでした。
さすがに地震直後の当日午後は患者さんが激減したのですが、翌12日(土)は花粉症などの患者さんが大挙して来られ大忙しでした。
このまま、月曜から通常どおりの診療、と思いきや、計画停電が始まり、困っております。電気がないと診療が困難となります(検査、会計、投薬etcすべて電気頼りですものね)。東京電力にもっとよい対策を求めるのは酷なのでしょうか。宮城県等の方々に比べれば停電くらいですむのだから我慢しなくてはと思っております。停電中にも診療できるように自家発電機を購入しようとしましたが、どこも売り切れで、やっと他県まで行って手に入れた次第です。
大惨事にもかかわらず、略奪もなく、冷静で秩序を守る日本人のメンタリティーは世界から称賛されていますが、一方、原発対応が必ずしも適切でなかった日本国政府は批判を浴びています。隠蔽体質や計画停電の手法等で東京電力も国民から非難されています。いつでも政府と大企業は批判されるものですが。
今まで「便利」にどっぷりと浸かっていた私たちは不便な生活に追いやられてしまいました。特にガソリン不足と停電は、私ら医療従事者にとっても、極めて困る問題ですが、被災者の方々の生活を考えれば、全く耐え得るものです。
いまだに放射能の広域拡散の恐怖は拭いきれないですが、関東地方の住民全員が西日本に移動できるわけではないし、いちおうの「覚悟」はしております。
〔呼称について〕
公式には「東北地方太平洋沖地震」と呼ぶそうですが、マスメディアでは「東日本大震災」が主流となっています。まず、新聞では、読売新聞が「東日本巨大地震」と呼ぶほかは、朝日新聞等ほとんど全ての全国紙・地方紙で「東日本大震災」と呼んでいます。テレビでは、NHKのみが「東北関東大震災」と言っていますが、民放各局は、「東日本大震災」としています。各有力週刊誌でも、同様です。
私も、「東日本大震災」が最も適当な呼称だと思います。
気象庁の公式名「東北地方太平洋沖地震」は長すぎますし、被害のあった茨城県や千葉県などのある関東地方が含まれない印象です。
また、読売新聞の「巨大地震」より、地震に伴う災害(津波による被害の意が含まれるでしょう。原発事故までをも含められるかもしれません)をも含めた「大震災」のほうが適当だと思われます。
そういう意味では、NHKの「東北関東大震災」も悪くはないのですが、後半の五文字があの「関東大震災」と同一というのがうまくないと感じます。「東日本」とすると、北海道をも含み、広すぎるのではとも思うが、その被害の甚大さ、深刻さ、広域性に鑑みれば「東日本」としてよいのではないでしょうか。
以上のことから、私は、「東日本大震災」を用いることとします。