・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(10)
在外公館がワインを過剰に購入していた問題で外務省が批判されているが、的はずれだろう。外交官たちが高級ワインを購入するのは、自分らが飲むためではなく、海外視察と称してやって来る国会議員等の接待のためである。
外務省・外交官は、自分たちの予算や人事に口出ししかねない政治家の機嫌を損ねないために、滞在中、高級ワインをはじめとする接待に努めているのが実情だ。公務員批判の風潮が強くなって久しいが、本当は、政治家の姿勢を問題視すべきである。
実際に、外務省関係者から聞いた話では、海外視察という名目で国費を使って来訪する国会議員のために、旅行会社の搭乗員まがいの仕事をさせられ、まるで大使館が「交通公社」のようだという。現地における情報収集活動という在外公館員本来の業務より、議員が泊まりたいホテルの部屋、行きたいレストラン、乗りたい特急車のお世話などで忙殺されるらしい。
かつて、機密費詐取や不正経理等、外務省をめぐる不祥事が次々に明るみになった際、外交官試験の廃止など、数々の改革が一応なされた。また、同じ頃、戦後最大の中央省庁再編も行われた。にもかかわらず、在外公館は、旧態以前のまま、何も手がつけられず、「聖域」扱いだった。日本国内でないので、実態がよくわからない。一般庶民が驚く高額の在外勤務手当など、在外公館の経理は納得し難いものが多い。役人自らでは改革できないのだから政治家がやればいいのに、その政治家が現地で官製「交通公社」の手厚い接待を受けるために強く言えない。というより、改革すれば、国会議員のセンセイ方自身が外国で羽を伸ばせなくなるのだから、改革には消極的になる。
今回のワイン事件を契機に、我々国民は、在外公館のあり方、国会議員と在外公館の関係について問題意識を持つことが肝要だと思う。