行政に翻弄される開業医

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(36)

PCRの保険点数が段階的に下がっており、ついに7月からは、去年の時の40%以下にまで下がってしまうという。点数下落に応じて検査会社への支払単価も下げてきてくれてはいるが、(被検者からの感染リスクが変わらずあるというのに)7月からは検査1件当たりの診療報酬額と検査会社への支払額の差額がほとんどなくなることになる。人件費等に鑑みれば赤字に陥る可能性が大きい。検査会社は民間企業であり、検査単価はこれ以上下げられないのは理解できるし、我々開業医も私企業経営体であるのだから、いくら「世のため、人のため」とはいえ赤字覚悟でPCR検査を継続することは限界がある。今後PCR検査から撤退する開業医はいないと誰が断言できよう。

抗原検査があるではないか、PCR検査は委託でなく自前でやればいいと言われるかもしれないが、私が実際に経験した範囲では、抗原検査は4件に1件程度は偽陰性があるし、自前PCR検査でも偽陰性があった。やはり信頼できる検査専門会社へ(結果報告が翌日にはなるが)検査委託するのが最も正確だと確信する。

更に、一時期、検査しなくても医師の判断で「みなし陽性」ができていたのが、検査体制が整ったという理由で禁止となった。しかし、感染者がいる家族内で時経ずして発症した人を陽性者とみなすことに妥当性がないと言えるのか。それこそ検査でコスト(公費)をかけるべきなのか。

アベノマスクのような大愚策で巨額の血税をドブに捨てている政府は、経費節減をお題目に、更なる愚策を弄している。第7波が来そうな、PCRニーズが更に高まりそうなこの時期に最現場の開業医のPCR検査意欲を削ごうとしているのである。