ローリングストーンズとビートルズの新曲
・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の音楽論(25)
2023年、なんとローリングストーンズとビートルズが立て続けに「新曲」を発表した。両方大好き人間の私としては、血湧き肉躍る気持ちだ。
〈ローリングストーンズ〉
まずローリングストーンズだが、前作の「A Bigger Bang」(2005年リリース) から18年ぶりの新作アルバム「HACKNEY DIAMONDS」である。前作発表時62歳だったミック・ジャガーが今回なんと80歳でその相も変わらずのワイルドな歌声を披露してくれている。今でもこんな声を出しているのなら、来日コンサートでもあれば行ってみたいと思うばかりである。しかし、ストーンズが来日するという話は残念ながら全く聞かない。シングルカットされた「Angry」がTVドラマの主題歌に使われるほか、レディ-・ガガとスティーヴィー・ワンダーが参加する「Sweet Sounds of Heaven」など、話題性に富んだアルバムとなっている。私の個人的感想では、前作の「A Bigger Bang」では、アルバム代表曲「Rough Justice」より「Rain fall down」が印象に残るメロディー(というか好きな曲)だったが、今回の「HACKNEY DIAMOND」でも、現時点では、「Angry」よりむしろ「Mess It Up」という曲がストーンズらしからぬ曲で最も印象に残った。この曲は、今は亡きチャーリー・ワッツをフィーチャーしていることも興味深い。それにしても歌声のみならず、このような新しい曲を創作できるミック・ジャガーとキース・リチャーズ(80)の合計160歳コンビには全く恐れ入る次第である。
〈ビートルズ〉
さすが、ビートルズの「最後の新曲」は、ストーンズの新作アルバムよりマスメディアが大きく扱ったようだ。もともと、1990年代に「Free as a bird」(全米6位)「Real Love」(全米11位)のときに技術的に「お蔵入り」状態だった「Now and Then」が最新のAI技術で見事復活再生したようなものである。こういうAI技術の利用なら誠に喜ばしいものである。ジョン・レノン単独の作詞作曲の作品だが、前の2曲同様、他の3人のパフォーマンスを加えてビートルズの曲として日の目を見た。当然のことだが、全米シングル・チャートで第7位(ビートルズとしては35曲目のトップ10入り)、全英シングル・チャートで1位となったらしい。曲の出来としては、ビートルズ時代のジョンの最後の名曲「Across the Universe」ほどではないが、ジョンらしい美しいメロディーラインが心に沁みるものとなっている。なにはともあれ、30歳代のジョンと80歳代のポールとリンゴが「共演」しているのがおもしろい。